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ガスパール・デュゲ
Gaspard DUGHET

1615-1675

フランスの菓子職人の子としてローマに生まれ、スペイン広場近くに形成された北方芸術家の居住区で育つ。1630年姉がニコラ・プッサンと結婚したことから、ニコラとは義兄弟の関係となり、自らガスパール・プッサンと称するようになる。ニコラのもとで初期の絵画修業を行った彼は、釣りや狩猟など遊興的主題による作品を通して、自然景の的確な描写技術を習得する。その一方で室内装飾の才能をそなえていたデュゲは、ローマの名門からいくつかの注文を受け、フレスコ画の仕事をこなしている。1647年からはサン・マルティーノ・アイ・モンティのカルメル派修道会の教会のために、風景画をフレスコで連作し、声価を確かなものとしている。デュゲは、古典的風景画の双壁とされたニコラ・プッサンとクロード・ロランの様式を折衷した画家、あるいは古典的風景画とサルヴァトール・ローザの前ロマン主義的風景画を統合した輌家としばしぱ評されているが、その作品は18世紀のイギリスにも数多くもたらされ、リチャード・ウィルソンをはじめ英国風景画家たちの間で敬意をもって受容された。しかし「絵画史上最も過少評価された画家の一人」(K.クラーク)といわれたほど、今世紀の美術批評史においてはその力量に見合わぬ扱いを受け続け、1980年代後半になってようやく彼の芸術の全体像が把握されるようになった。


サビーニの山羊飼

サビーニの山羊飼

1669-71年
油彩,キャンヴァス 68.5×49.5cm
平成3年度購入

サビーニはローマの北東に広がる山岳地帯の名称。縦長の画面を二等分する地平線、地平線と直交する両側の木、前景を走るジグザグの小道。本作品はこういった数本の軸を基本に、岩・低木・家などが肉付けのように配されている。日中の陽射しのもとに葉は一枚一枚の形を明確に現し、陰に浸された地面は十分水を吸い込み潤っている。
義兄のニコラ・プッサンやクロード・ロランが本格的に取り組んだとはいいがたいローマ近郊の山岳地帯は、抑制された深みのある色彩と手堅い筆致によって生き生きと描き出されている。デュゲは構図において、プッサンほど厳格ではないが、クロードより構築性があり、光においてはクロードほど鋭敏に反応していないが、プッサンより光の効果を用いているといわれるが、本作においてもその指摘はあてはまりそうである。
1816年に本作は、英国のジョゼフ・パウウェルによってエッチングにされたが、おそらパウウェルは、その頃の所有者であった画家、ベンジャミン・ウェストのもとで本作に接する機会を得たのだろう。(K)


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