ヘッダー
元永 定正
MOTONAGA Sadamasa

1922(大正11)-2011(平成23)

三重県上野市に生まれる。1946(昭和21)年郷里の文展系画家・浜田万吉に師事。1952(昭和27)年神戸に移住し、様々な職業に就きながら絵をかいていた。1953(昭和28)年芦屋市展に出品、受賞。1955(昭和30)年には吉原治良等が設立した「具体美術協会」に参加。以後、退会まで16年間全展に出品する。初期はビニールに色水を入れて複数個吊すインスタレーションや、舞台を使う具体展で煙を使った作品を発表した。1958(昭和33)、日本画のたらし込みに似た技法で水性樹脂絵具を使った平面作品を制作。またこの頃から「具体」の活動は国際的なアンフォルメルの運動と重なり合ってくる。1966(昭和41)年ニューヨーク・ジャパンソサエティーの招きで渡米、翌年ヨーロッパを巡遊し帰国する。この頃から1957年以前のシンプルな「かたち」の追及のスタイルを再開。1971(昭和46)年「具体」を退会。「かたち」のシリーズはデリケートなグラデーション、カーブによってできる小さな穴などを伴い、その探求は継続中である。1990(平成2)年末、三重県立美術館でビニールと色水のインスタレーションを再制作した。


作品

1963(昭和38)年
油彩、水性樹脂絵具、キャンヴァス 125.7×183.1cm
昭和59年度購入

元永の作家活動全域にわたってみられる、ぬぼーとした、「けったいな」形態が、大小交えてからみあい、重なり合って出現している。日本画のたらし込みに似た「流し」のテクニックにより油性樹脂絵具が層をなす。絵具は形態表現の意志に制御されながら、その粘度や重さやにじみといった本来の性質に生きている。
これらの形態はあたかも鉱石の断面のような様相を呈し、微細に混じり合ってはいても色彩の純粋さは損なわれていない。期せずして自然の造型のアナロジーになっているといえるだろう。そこにはまた熱い生命力も感じられ、生物的なエネルギーが蓄積されているように見える。多色の飛沫はエネルギーの充溢を感じさせるように、二つの比較的大きめの形態の丸い先端を飾る。
知性の枠を美の創造に対する枷ととらえ、「阿呆」という言葉で自らの制作を表現する元永は、おそらく、自然に対立する存在としての人間ではなく、自然の一部としての人間存在とその創造行為を考えている。そして彼は人間の美的感受力の進化の可能性を信じて、謙虚に「新しい美」を産み続ける。(Ym)                 


作品収集の方針と特色

主な収蔵品 作家名リスト 新収蔵品
TOP MENU

ロゴマーク Copyright (c) 1997-1999 Shizuoka Prefectural Museum of Art
禁無断転載・複写