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クロード・ロラン
Claude Lorrain

1604/05?-1682

本名はクロード・ジュレ。フランス東北部のロレーヌ地方のシャマーニュに生まれる。ザントラルトの伝記によれば、12歳の頃ローマに移り、菓子職人の見習いとなったが、まもなくその道を断念し、画家に転じたという。1625年に一時帰国したが、翌年ローマに戻り、以後没するまでローマで活動する。初期にはA.タッシに師事し、バンボッチアンティやP.ブリルなどを学んだのち、まもなく大樹や建築を枠として配した定型を確立し、海景画と風景画を対の形式でよく描くようになる。1630年代中頃のローマで、クロードの絵は大いに世評を高め、その頃着手した素描帖『真実の書 Liber Veritatis』(大英博物館)は、贋作の多発を防ぐために自作の構図を記録に留めたものだったといわれる。1640年頃から主題の重要性を深く認識するようになった彼は、聖書や神話の人物を、定型に基づいた風景にもちこみ、物語性を要求するヨーロッパ各地のパトロンからの注文に応じていた。1650年以降、それまでの画面を染め上げていたピンクやオレンジ色の光は、寒色系の光に替わり、その一方で主題解釈もパトロンの個人的意向を十分くみいれたものとなり、作品は私的性格を帯びていった。およそ半世紀に及ぶ活動期間に、300点近い絵画、1200点余りの素描、51点のエッチングをのこし、J.F.ブレーメン、C.J.ヴェルネ、R.ウィルソン、W.ターナーなど後の西欧風景画家たちにも大きな影響を与えた。                                          


笛を吹く人物のいる牧歌的風景

笛を吹く人物のいる牧歌的風景

1630年代後半
油彩,キャンヴァス 99.7×133.3cm
昭和61年度購入

夕暮れの赤々とした陽光に染まる平野を描いたクロード初期の牧歌的風景画。陰に浸された大木の周辺には3人の牧人、山羊、牛が遊び、左後方には神殿の遺跡と滝のある岩丘が見える。書割的に配たされた大木の間には、クロードの代名詞とも言える深々とした空間が開け、遠景の山並みは光を浴びて明るく輝いている。喧騒も争乱もない笛の音のみが響く安らぎに満ちた情景である。
『真実の書』と名づけた画帖に本作は記録されていないが、画中の3人の人物は、ローマ教皇ウルバヌス8世からの注文作で1639年に年代推定される《カステル・ガンドルフォのある風景》(LV. 35, フィッツウィリアム美術館蔵)に登場する人物とよく似ている。こうしたモティーフの組合わせも1630年代にしばしば用いられてる。こうしたモティーフの繰返しは、生涯を通して最も多作であったこの時代においては当然のことであった。
M.キットソンはこの風景画が『真実の書』に記録されていない理由を論じて、クロードは注文に応じて制作したのではなく、在庫作品として買手がつくまで未完の状態で置いていたのではないか、と推量している。(K)


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