ヘッダー(ロダン)
ロダン 鑑賞の手引き
AUGUSTE RODIN Guide book

 

形の反復
répétition

 

 《地獄の門》の上部につけられた3体の男性像は、《三つの影》と呼ばれる。これは、もともとは《アダム》という一人の男性像を、3人作って並べたものである。これと同様に《地獄の門》には、同じ人物の形が繰り返し使われているのをいくつも見ることができる。例えば左扉の上部で、仰向けにのけぞって落ちていく男性「墜ちる男」の形は、右柱の上部で、背中を見せながら女性を抱えている男性「私は美しい」の姿と同じである。
 ブロンズ彫刻は、鋳型から作られるので、まったく同じ形をした作品を複数作ることができる。ロダンが《地獄の門》で形の反復を行ったのは、こうした特性を活かしたものであるが、その目的は、同じ形を場所や角度を変えて何度も使うことによって、様々な組み合わせを試みることにあった。しかも形の一部分を切り取って使うなど、扱い方は自由自在であった。《〈影〉の頭部》《〈影〉のトルソ》は、《三つの影》の一部を、独立した彫刻作品にした例である。


《〈影〉の頭部》


《〈影〉のトルソ》



《地獄の門〈三つの影〉》

 形の反復使用は、ロダンの発想の自由さを物語る一方で、《地獄の門》全体が、時間や空間を超越したものであることも語っている。普通は、一人の人物は一つの場所、時間において一人しか存在しない。同じ人物が3人もいて、真中で手をあわせているなどということはありえない。となると《地獄の門》は、同時に複数の時間や空間を表したものであると考えることもできる。このように、一つの作品のなかで、同じ形を繰り返し使うことは、芸術作品の時間や空間の考え方を、問い直すことにつながる。このことを意図的に行ったのは、20世紀後半の現代美術の分野、例えばポップアートやミニマルアートであった。ロダンは実にそれらに100年も先駆けていたのである。


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