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移動美術展
「人と風景に魅せられた作家たち」報告

 日本の公立美術館では、普及活動の一環として、美術館から遠隔地にお住まいの方々にもコレクションを鑑賞していただくことを目的とした移動美術展を開催しているところは少なくありません。当館も例外ではなく、開館3年目の1988年から、年1回のペースで移動美術展を開催してきました。また、東西に長い静岡県の地理を鑑み、例年、県東部および西部地区から1箇所ずつを会場としています。蒲原町立図書館と島田市博物館で開催された今年度は、延べ4,500人余りの入場者を迎えました。
 移動美術展の仕事は、開催される年の前年から始まっています。まず希望会場を募集・決定し、出品作品の検討・選定を経て、会場への搬入・展示という段取りで行なわれます。館での収蔵品展と異なる点は、県ゆかりの作家を重視した作品選びにあります。当館の場合、ロダンのコレクションや西洋画の優品への出品リクエストも多くありますが、県ゆかりの作家の作品には、鑑賞者の方のよりダイレクトな反応が見られることから、ここに地域の公立美術館としての立脚点の基本があると再認識されるように思われます。
 移動美術展の場合、普段の展覧会と異なる点のもう一つは、各会場の担当者の方々の熱意です。蒲原町での会期中は、生憎台風にたたられ、湿度が大幅に上昇するという不運に見舞われました。作品への影響を心配した会場担当者は、勤務時間を大幅に延長して、コンディション・チェックに努めてくださいました。移動美術展の会場は、美術館・博物館施設と異なり、必ずしも施設条件が万全とは限りません。しかし、そうした条件を乗り越えて、できる限りベストの展覧会に近づける姿勢を、美術館という枠組みを超えて共有することができる点も、移動美術展の醍醐味でしょう。

移動美術展ちらし
(当館主任学芸員 南美幸)  


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