ヘッダー1

 

吉岡健二郎館長の逝去を悼む

 2月2日、吉岡健二郎館長(78歳)が、胸部動脈瘤の急変により自宅にて逝去され、数日後近親者による葬儀が執り行われました。
  吉岡館長が現職に就かれたのは平成6年1月のことですので、館長としての在職年数は11年に及びました。この間に、ロダン館の開館、天皇皇后両陛下行幸啓、開館10周年・15周年を記念する名品の購入など、思い出深いことが幾つもありました。また、「ロダン大理石彫刻展」「東アジア/絵画の近代」「イタリアの光景」など、難問山積の自主企画展の実現にあたっては、その都度貴重な助言をいただきました。
  吉岡館長が、県立美術館の館長を引き受ける決意をされたのは、美術館が好きだったからに他ならないように思えます。私は吉岡館長から、「ぼくは若い頃、大学の教師になるか、美術館の学芸員になるか、随分迷ったんだ」という話を、何度か聞いたことがあります。そうした美術館への愛着があってか、県立美術館と関わりのある静岡県博物館協会、静岡県芸術祭と富嶽ビエンナーレ(ともに公募展)の運営にも力を注がれていました。協会の会議では議事を円滑に進行されていましたが、すぐに承認しがたい議案には納得がいくまで議論を続ける一幕もありました。また、県立美術館の友の会やボランティアの方々にも、十分な気配りをされていて、時に依頼があれば講演も快諾されていました。
  吉岡館長は明るく高潔なお人柄でした。美術館の運営上、難しい事態に直面されても、判断に冷静さを失われることはありませんでした。館内の事情がどうあろうと、公的な利益につながることを常に優先されていました。また、吉岡館長は、毎月学芸課で開催している研究会を殊のほか重視されていました。学芸員の発表に耳を傾け、美学美術史学の専門家としての立場から、的確なご意見を忌憚なく述べてくださいました。長年芸術について思索を重ねてこられた方だけあって、館長からの示唆に富んだコメントは、私たち学芸員に様々なことを気づかせてくれました。研究に対する姿勢は、先学に謙虚、そして難解よりも平明を好まれていました。さらに付言すれば、この研究会は準備室時代から続く伝統を誇り、館長としてのご指導は、鈴木敬前館長から受け継がれたお仕事のひとつでした。当館における数々の自主企画展が、この研究会での批正や励ましを経て実現してきたことを、吉岡館長自身、少なからず自負されていたようです。
  吉岡館長の急逝は予期しないことでしたが、私たち館員は、生前ご交誼を結ばれていた皆様とともに、故人のご冥福を心からお祈りしたいと思います。そして同時に、これまでの暖かいご指導を思い起こし、県立美術館を今後とも発展させていくことを心に期する次第です。
(学芸課長 小針 由紀隆)

<< back | Next>>


来館者の声 ボランティア活動 友の会について 関連リンク
カタログ通信販売 前売り券のご案内 美術館ニュース「アマリリス」より 年報
TOP MENU

ロゴマーク Copyright (c) 2005 Shizuoka Prefectural Museum of Art
禁無断転載・複写