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美術館問はず語り
「気になるキャプションの表記」



 先日或る目的で全国博物館大会に出席した。博物館を取り巻く昨今の諸事情を受け、博物館における評価の問題がテーマに掲げられていた。「博物館は変わらないために変わるのだ」と誰かが言っていた。保持しなくてはならないものを失わないために、変化する必要があるという意味だろう。面白い言い方だと思った。
  大会開催中、指定管理者制度を導入して多くの入館者を稼ぎだしている博物館があるというので、昼食がてら視察にいってみた。なるほど常設展は、小学生と団体客で混雑していた。しかし、特別展の方はガラガラだった。ローマ教皇を紹介する写真パネルに、キャプションが付いていた。「シスト5世」に「グレゴリオ13世」。ローマ教皇の名前はラテン語で表記するのが一般的だから、「シクストゥス5世」に「グレゴリウス13世」と書いてもらいたい。たかがキャプション1枚、しかし、ここから様々なことを考えてしまう。
  博物館の良質の展示を支えるのは、学芸員の日々の調査・研究だ。それが保たれなければ、展示は学問的信頼度を失いかねない。逆にそこがしっかりしていれば、多少奇抜な普及プログラムも許容されるだろう。年間の入館者数が少し減ってもいいから、学問的信頼度を失わないでほしい。もちろん、これを他山の石としよう。キャプション表記ひとつであっても、現場の姿勢と環境を反映しかねない。今日の博物館では、こうした細部にも経営的配慮が求められている。

(当館学芸課長 小針由紀隆)





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