ヘッダー1

 

谷田の丘を文化の丘に −地域連携を深める


18世紀イタリアの画家パンニーニの描いたローマのナヴォナ広場

地域連携を深めよう−いまや全国いたるところで、こうした掛け声を聞くことができます。静岡市駿河区にある谷田の丘もその一例で、それぞれ目的を持って設置された4つの公的機関が、財源確保の難しさ、職員の意識改革、資源の有効活用などから、相乗りしての連携に踏み出しました。

静岡県立美術館は、昨年開館20周年を迎えましたが、20年を経過して周辺の木々はしっかり根をはり、開館当時よりすばらしい環境をつくりだしています。近隣には、県立大学、県立中央図書館、県埋蔵文化財調査研究所もあり、4機関で文教地区を形成しています。しかしながら、その運営はお互いにバラバラで、一部の職員や教員が交友することはあっても、組織レベルで連携することはありませんでした。

今春、県立大学は公立大学法人へと移行しましたが、その一年ほど前から「縦割り行政の中に横の連携を」という動きが現れてきました。相互に連携することで、文化や学術の力を倍化できるのではないだろうか。個々に蓄えてきた資源や知的ノウハウをもっと磨けるのではないだろうか。この点に遅ればせながら気づいた4機関は、定期的にミーティングを開き、何ができるかを探りはじめました。

最初の実践としては、僭越ながら私自身が県立大学で特別講義をしました。県立大学の南北に長いキャンパスはローマのナヴォナ広場を原型にしていますが、学生たちはそのことをほとんど認識していなかったようです。ナヴォナ広場のスライドを映写したとき、聴講者の間から「オー!」という驚きの声があがりました。自分たちのキャンパスの源流がスライドで示され、彼らは古代ローマ期に建設された陸上競技場の延長線上に立って勉学していることをはじめて知ったのです。

谷田の丘を見渡してみても、風景画やロダン彫刻のコレクション、徳川家康関連の貴重な史料、弥生時代にさかのぼる出土品など、他に誇ることのできる美術品や史料はいくつも用意されています。そして学生たちの若い力も心強い戦力です。これらの資源を生かすには、4機関が同じ場所にあるという地の利をいかし、協働していく必要があるでしょう。

この一年間を振り返ると、谷田の丘での地域連携はマスコミから幾度か注目されてきましたが、連携事業にはほとんど特別の経費をかけていません。そこに関わった人たちはみな、通常業務の延長線上の活動として汗をながしてきました。今後4機関は、最寄の駅や商店街、あるいは地域住民の方々と意見交換をするなど、案を練っていますが、この地域の特性である学術・芸術・歴史・教育の芳香をどのように発していくかは、なかなか大きな課題です。

どこの地域にもそこならではの特性があり、その特性を考慮しなくては、地に足の着いた仕事はできません。いまはできることを探りはじめた段階ですが、近い将来、谷田の丘から知的雰囲気を注ぎ込んだメッセージを発信し、この地域を活性化させていきたいと考えています。

(当館学芸部長 小針由紀隆)


母袋俊也「絵画のための見晴らし小屋・荒神山」 2006年
「風景連続フォーラム」のご案内

当館は、「17世紀以降の東西の風景表現」を作品収集の基本方針のひとつとしています。そのため、様々な山水、風景画を所蔵し、また風景をテーマとした展覧会や教育普及事業を行っています。「風景連続フォーラム」はその一環で、風景論について識者の講演を聞くものです。今回は画家、母袋俊也氏をお招きします。母袋氏は、風景をテーマとした絵画を描く一方、「絵画のための見晴らし小屋」という独自の視覚体験装置を制作、設置しています。ご自身の制作活動を紹介いただきながら、風景と絵画の問題を語っていただきます。

風景連続フォーラム・作家に聞く
「風景−視線の双方向性−絵画 …自作に沿って」
講師:母袋俊也氏(画家、東京造形大学教授)
日時:平成19年11月11日(日) 14:00〜15:30
講座室、聴講無料、申込み不要




<< back | Next>>


来館者の声 ボランティア活動 友の会について 関連リンク
カタログ通信販売 前売り券のご案内 美術館ニュース「アマリリス」より 年報
TOP MENU

ロゴマーク Copyright (c) 2005 Shizuoka Prefectural Museum of Art
禁無断転載・複写