風景の交響楽

風景の競演

風景の結晶

このコーナーでは油彩画を中心に独自のスタイルを持つ風景表現をご紹介する。画家は誰もが自分だけの個性的な表現を持っているのものだが、ここで紹介する作品群にはとりわけ強く画家の個性があらわれている。いずれの作品も伝統的な写実のきまりを離れた自由な雰囲気にあふれている。
歴史をひもとけば、19世紀後半、クロード・モネら印象派の画家たちは、伝統的な規範よりもみずからの眼に忠実に光や風の移ろいを描きはじめた。それをきっかけに、20世紀の画家たちは自分たちの気持ちひとつで色やかたちを自由に扱うようになったのである。華やかなヴラマンクやシニャックから繊細なルーセル、大地への深い慈しみをたたえた香月まで、さまざまな画風がそこにある。しかし、いずれの作品にも画家の眼を通した真実の「風景」が結晶しているのである。

光り輝く絵具の粒子 ポール・シニャック 《サン=トロペ、グリモーの古城》

海に降り注ぐ陽光。山頂にそびえる古城。作者は地中海をヨットで航海中に、サン=トロペ湾を発見した。暖色と寒色を対比させながら、光と影、形とボリュームを表現。作品の輝きは、一つ一つの色点の緻密な配置から生まれている。

輝く色彩。フォーヴ期ヴラマンクの本領発揮。 モーリス・ド・ヴラマンク 《小麦畑と赤い屋根の家》

小麦畑や農夫という画題や細長くうねるような筆触はゴッホの作品を想起させずにはおかない。アトリエを構えたシャトゥーの街には、このような赤い屋根の家並みがみられたという。

この世ならぬはかなさを表現した版画技法の極致 ケル=グザヴィエ・ルーセル 《風景 ニンフの後ろで遊ぶキューピッド》

こまやかで震えるような筆致を用い、重さを感じさせないはかなげな質感と精妙な光の調子を見事に表現している。本作は、セザンヌやルオーの評価をもたらした近代フランスの大画商ヴォラールの企画による版画集のために制作された。

この世ならぬはかなさを表現した版画技法の極致 ケル=グザヴィエ・ルーセル 《風景 田園風景の中の女たち》

こまやかで震えるような筆致を用い、重さを感じさせないはかなげな質感と精妙な光の調子を見事に表現している。本作は、セザンヌやルオーの評価をもたらした近代フランスの大画商ヴォラールの企画による版画集のために制作された。

この世ならぬはかなさを表現した版画技法の極致 ケル=グザヴィエ・ルーセル 《風景 海岸の人物》

こまやかで震えるような筆致を用い、重さを感じさせないはかなげな質感と精妙な光の調子を見事に表現している。本作は、セザンヌやルオーの評価をもたらした近代フランスの大画商ヴォラールの企画による版画集のために制作された。

この世ならぬはかなさを表現した版画技法の極致 ケル=グザヴィエ・ルーセル 《風景 風景の中の赤いドレスの女》

こまやかで震えるような筆致を用い、重さを感じさせないはかなげな質感と精妙な光の調子を見事に表現している。本作は、セザンヌやルオーの評価をもたらした近代フランスの大画商ヴォラールの企画による版画集のために制作された。

この世ならぬはかなさを表現した版画技法の極致 ケル=グザヴィエ・ルーセル 《風景 縞の外套の女》

こまやかで震えるような筆致を用い、重さを感じさせないはかなげな質感と精妙な光の調子を見事に表現している。本作は、セザンヌやルオーの評価をもたらした近代フランスの大画商ヴォラールの企画による版画集のために制作された。

この世ならぬはかなさを表現した版画技法の極致 ケル=グザヴィエ・ルーセル 《風景 水浴者たち》

こまやかで震えるような筆致を用い、重さを感じさせないはかなげな質感と精妙な光の調子を見事に表現している。本作は、セザンヌやルオーの評価をもたらした近代フランスの大画商ヴォラールの企画による版画集のために制作された。

故郷への想いがつまった風景の結晶 香月泰男 《冬畠》

香月の自宅、山口県三隅町の風景をもとに制作された作品。絵具を三層に塗り重ねていく「シベリア・シリーズ」と同じ手法で描かれている。「シベリアで故郷を想い、そして故郷でシベリアを想う」、この複雑な香月の心境をこの作品は我々に伝えている。

行き行きて抽象 鳥海青児 《壁の修理》

日本的な油彩表現を模索しつづけた作者は、沖縄の石垣に惹かれた。厳しい風雨に耐え、修理を重ねた壁は、まさに油絵の具を何度も重ねて描く鳥海の絵そのものであった。マチエール(絵肌)の探求は、ここに極まり、表面的なモチーフの形はもはや問題ではない。

大陸の大地を思わせる大らかな画面 山口長男 《脈》

合板の表面に、ペインティングナイフで、絵の具を幾重にも塗り重ねることによって作り上げた画面。厚みのある色面は、大らかで力強く、大陸の大地を思わせる。線状の盛り上がりによって区切られた黄土色の四角い面は、互いに押し合いながら外に向けて広がろうとしているかのようにも見える。

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静岡県立美術館 学芸課
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