アマリリス Amaryllis

2011年 冬 No.100

本の窓
『ルリュールおじさん』 いせひでこ著

理論社 2007年11月 第11刷

 「ルリュール」とはフランス語で、手作業による書物の製本、もしくはその職人のこと。 この本の舞台はパリ。大事にしていた植物図鑑が壊れてしまい、途方に暮れる少女ソフィー。彼女がルリュールの老人と出会い、本を直してもらう様が描かれます。幼いソフィーは、本が老人の手で新たな命を得ていくのに目を瞠みはり、少女と出会ったルリュールの老人は来こ し方かたを振り返り、自らの父の姿を思い出していきます。大事なものを伝えていくのは、頭上に振りかざした拳ではなく、こうやって静かに、丹念に仕事を重ねる手なのでしょう。「本には大事な知識や物語や人生や歴史がいっぱいつまっている。それらをわすれないように、未来にむかって伝えていくのがルリュールの仕事なんだ」という件は、胸に迫るものがあります。お勧めします。
(当館上席学芸員 新田建史)

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