アマリリス Amaryllis

2011年 秋 No.103

本の窓
『天才の日記』 サルバドル・ダリ著/東野芳明訳
二見書房 1971年

 私事で恐縮ですが、ノートに日記をつけ始めてからもう10年程になります。もとより、日々の雑感などを書き留めた取るに足らぬものですが、本書を読むと改めてわが凡人振りを痛感させられます。いわずと知れたシュルレアリスムの巨匠、ダリ(1904~89)の日記は、「天才の日常生活が、他の人間たちのそれらとは本質的に異なるものである」ことを我々に教え、その創作の裏にある彼の思索を垣間見せてくれます。奇行やスキャンダラスな言動で知られる著者の孤独に満ちた意外な内的独白、とまで言えるかどうかは意見が分かれるかもしれませんが、放屁に関する長々とした議論、ダリによる画家の採点表など、充実した付録も読み応え充分。秋の夜長、寝る前に手に取られることをおすすめします。
(当館主任学芸員 福士雄也)

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