アマリリス Amaryllis

2012年度 春 No.105

県立美術館の評価 10年目を迎えて

 静岡県立美術館では、平成13年度より、評価指標(ベンチマーク)の検討を始めました。当初、財政部門からの「展覧会の総入館者数」と「収支バランス」以外の指標を提示するようにとの前向きな示唆によって、国内にはまだ例のない評価指標を検討することになりました。その際、北海道大学の佐々木亨氏の協力もとに、館内に検討チームを設けて、なかば暗中模索の状態で、館の事業を約100の指標にし、すべての指標の数値化を試みました。その後、指標は74に精査され、現在は、34になっています。
 平成15年~16年度にかけては、評価システムの設計を主な目的とし、「静岡県立美術館評価委員会」を設置しました。本委員会では、当館の経営状態を詳つまびらかにするとともに、美術館の使命・目標の見直しを行い、それに相応ふさわしい評価指標を検討しました。本委員会での検討結果は、平成17年3月に報告書「提言:評価と経営の確立に向けて」にまとめられ、当館の自己評価の原型となった「ミュージアム・ナビ」と呼ばれる戦略計画方式と第三者評価委員会の設置など主に4つの提言がなされました。
 その結果、静岡県立美術館の評価は、以下の3層構造になっています。


平成23年度静岡県立美術館
自己評価報告書(一次評価)

①自己評価
 「総括的評価」、「達成目標等に対する評価」、「今後の取組」から自己評価は成り立っています。達成目標の状況を評価するための指標として34項目(定量的指標 28、定性的指標 6)が設定されています。例えば、「展覧会の来館者数」、「他の美術館や大学と連携した取組件数」、「収蔵品の公開件数」、「レストラン・カフェ、ミュージアムショップの利用者満足度」などが主な指標となっています。
②県庁の支援体制に関する総括
 美術館を所管する県庁の文化政策課が、美術館に対する支援計画に関して、その前年度の実施状況を報告し、併せて当該年度の支援方針を発表しています。またそれぞれの支援状況に対して、実績内容とともに達成度(A~D)の判定が示されています。
③第三者評価委員会による評価
 「自己評価に対する二次評価」、「県庁の支援に対する一次評価」、「美術館事業の改善に向けた提言」の3つから構成されています。それぞれに対して、第三者評価委員の意見やコメントが掲載されています。
  このように、静岡県立美術館の評価は、10年を経過して、制度としては確立しました。しかし評価や改善は、主に現場のオペレーション・レベルにとどまっており、今後は、設置者・県庁のガバナンスや館長のマネジメントに対する評価が急務になってきています。そのことをふまえて、今年度より、新たな取組として、「未来館者に関する調査」を実施するとともに、「設置者のガバナンスに関する作業部会」を設け、検討を開始しました。
 静岡県立美術館の評価は、さらなるバージョンアップを図る時期にさしかかっています。今後も全国の公立美術館のマネジメントをリードする美術館であり続けたいと考えています。
(当館上席学芸員 泰井 良)

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