アマリリス Amaryllis

2008年度 秋 No.91

本の窓
「アーティスト症候群」 大野佐紀子著

明治書院 2008年3月 第2版

アーティスト症候群の表紙画像 かつて著者は東京芸術大学を卒業後、美術の枠組みが壊れてしまった70年代以降の「身も蓋もない」「蓋もないどころか底が抜けている」状況の中、彫刻家として活動していた人です。が、「前のものを批判し乗り越えていくという近代美術以来の命題を本当に根幹に据えていたら、飽和状態のまま延命していくだけのアートから降りることが、一番正直な選択ではないだろうか」と考え、アーティストであることをやめたのでした。
本書は、巷に増殖する○○アーティスト、カリスマ××等の言葉を手がかりにして、「アーティストというポジション」が「膨れ上がる「被承認欲」と根拠なき万能感を抱えた若者の、夢の受け皿となっている」有様を切り出していきます。アート業界で「王様は裸じゃないか」と言っている、真っ当な本です。お勧めします。
(当館学芸員 新田建史)

このナンバーの号のトップ

前のページヘ次のページヘ