アマリリス Amaryllis

2008年度 冬 No.92

移動美術展報告

東西に広い静岡県では、県立美術館から遠く離れた地域のみなさんに、美術館の館蔵品を鑑賞していただく機会が必ずしも多くはありません。そこで、静岡市から離れた地域へ館蔵品を持っていき、展示、公開する移動美術展を開催しています。開館3年目の1988(昭和63)年から毎年開催しており、すでにのべ12万7千人を超える皆様にご観覧いただいております。
今年度は、県立富士宮東高校(富士宮市)と県立気賀高校(浜松市北区細江町)が会場となりました。両校とも芸術科のある高校で、文化教育にたいへん熱心なところです。また、学校開放日や展覧会、講演会などを催し、地域住民との交流も盛んにおこなっています。富士宮東高校では11月4日〜10日(「静岡の美」展と同時開催)、気賀高校では11月25日〜27日に開催され、生徒はもちろん、会期中の一般公開日には多くの住民の方も来場くださいました。展示作品は、会場の環境上の制約からブロンズ彫刻を中心とし、ロダン《考える人》(小型像)と近代彫刻、および馴染みやすい現代美術作品を数点、展示しました。
学校が会場となったことにより、生徒と美術館とが共同で取り組む事業がいくつか行われました。例えば展覧会ポスター、チラシを生徒がデザインし、会場のディスプレイも生徒の手によって飾られました。また一般来場者向けのギャラリートークも生徒が行いました。「美術品の鑑賞をとおして、いろいろなものの見方や考え方を身につけ、柔軟な発想ができる人になりたい」と、その生徒は解説を締めくくり、来場者の大きな拍手を受けました。
移動展に限らず、今日の展覧会活動には、美術品を公開するだけではなく、その良さをより深く味わっていただくための取組が求められています。移動展も近年、ギャラリートークやワークショップ、学校連携など、様々な普及活動と連動しながら展開してきました。今後も、より多くの皆さんに、より深く館蔵品を楽しんでいただける移動展を目指したいと思います。
(当館主任学芸員 堀切正人)

会場ディスプレイの写真
生徒による会場ディスプレイ
(気賀高校)
生徒によるギャラリートーク(富士宮東高校)の写真
生徒によるギャラリートーク
(富士宮東高校)
生徒デザインによるポスター(富士宮東高校)の写真
生徒デザインによるポスター
(富士宮東高校)

このナンバーの号のトップ

前のページヘ次のページヘ