アマリリス Amaryllis

2008年度 冬 No.92

よみがえる黄金文明展 〜ブルガリアに眠る古代トラキアの秘宝〜
2009年4月11日(土)〜5月15日(金)

皆様、世界最古の黄金製品は、どこから出土したかご存知でしょうか?エジプト?メソポタミア?アンデス?いえいえ、違います。実は、ブルガリアからなのです。1972年、ブルガリア東部のヴァルナで発見された約2000点の黄金の遺品は、重量にすると約6キロ。調査によると、これは紀元前5000年紀のものだとのこと。つまり、石器時代と考えられていた時代に、高度な金を用いる文化があったということなのです。
来年度初頭、当館で開催を準備している「よみがえる黄金文明展 〜ブルガリアに眠る古代トラキアの秘宝〜」では、この最古の黄金遺品の展示も予定しています。
ブルガリアと聞いてもヨーグルトか大相撲の大関のことしか思い浮かばない、という方も多いかと思います。ブルガリアは南東ヨーロッパのバルカン半島にあり、北がルーマニア、南にギリシアやマケドニア、トルコ、西にセルビア、東には黒海のある国です。
このブルガリアを中心として、最古の黄金製品を作った人々の後に、トラキアと呼ばれる文明が花開きました。ヨーロッパとアジアの中心に位置したその独自の文化は、古代ギリシア人に影響を与えることもあるほど高度なものでした。そしてトラキアもまた、驚くべき黄金製品の数々を生み出した文明だったのです。
「よみがえる黄金文明展」では、その輝く秘宝の中から、21世紀の大発見と呼ばれた《トラキア王の黄金のマスク》をはじめ、華麗な杯や武具など、日本初公開作品を含む約170点が出品される予定です。
独自の文字を持たなかったため、資料が極めて少ないにもかかわらず、その勇猛さと文明の豊かさによって、ギリシアやローマの文献に名をとどめる騎馬民族トラキア人。その実像はようやく近年、明らかになってきたばかりです。まだまだ多くの謎を秘めたこの文明の姿を、この機会に是非ご覧下さい。
(当館主任学芸員 新田建史)

トラキア王の黄金のマスクの写真
《トラキア王の黄金のマスク》
紀元前5世紀前半
PHOTO:Niholay Genou
鹿形リュトンの写真
《鹿形リュトン》
紀元前4世紀末〜紀元前3世紀初頭
PHOTO:Nikolay Genou
アンフォラ形リュトンの写真
《アンフォラ形リュトン》
紀元前4世紀末〜紀元前3世紀初頭
PHOTO:Nikolay Genou

このナンバーの号のトップ

前のページヘ次のページヘ