アマリリス Amaryllis

2009年度 秋 No.95

特集 狩野派の世界2009
2009年9月10日(木)〜10月18日(日)

前号では今展の概要について紹介させていただきましたが、今号では出品作の中からいくつかピックアップしてご紹介したいと思います。
まず、室町期の作例として紹介したいのが、狩野元信《三聖吸酸図》(個人蔵)です。元信は初代正信の跡を継ぎ、狩野派の流派としての基礎を築いた人物。蘇東坡、黄庭堅、仏印禅師の三者が酢を舐め、ともに顔をしかめている様子を描いています。これは、儒教・道教・仏教の教えが本質的には同じであるとする、三教一致の思想にもとづいたもの。奇怪な顔の表現がどこかユーモラスですが、このアクのある描写は手本とした中国画の影響とも言われています。
次に、桃山期の作例としては狩野永徳《松に叭々鳥・柳に白鷺図屏風》(個人蔵)が挙げられます。昨年発見され、新聞報道でも話題となった作品です。ダイナミックな樹木や流水の表現はまさにこの時代の狩野派を代表すると言うにふさわしく、数少ない永徳真筆作品と考えられる点でも大変貴重な作品です。
当館の狩野派コレクション中、唯一桃山期の作例である、狩野宗眼重信《帝鑑図・咸陽宮図屏風》(当館蔵)にも注目です。鮮やかな色彩、眩い金地は、まるでたったいま完成したばかりであるかのようで、400年という時間の経過を感じさせないその保存状態の良さは驚くべきものです。2・26事件で暗殺された、高橋是清の旧蔵品でした。
江戸期のものとして、ここでは久隅守景《蘭亭曲水図屏風》(当館蔵)を挙げておきます。謝安ら42人の名士が蘭亭に会し、曲水に杯を流して詩を詠んだという、中国・晋時代の故事を描いたもので、生き生きとした人物描写が大変魅力的な作品です。今年度新たに当館の狩野派コレクションに加わった名品。館蔵の守景作品としては、これが第一号となります。
このほか、展覧会では新出作品・初公開作品あわせて17点も出品されます。会期残りあとわずかですが、まだご覧になっていない方は、そして一度ご覧いただいた方も是非お越しください。
(当館学芸員 福士雄也)

狩野元信《三聖吸酸図》の画像
狩野元信《三聖吸酸図》
個人蔵


狩野宗眼重信
《帝鑑図・咸陽宮図屏風》
(左隻)当館蔵


久隅守景
《蘭亭曲水図屏風》
(左隻)当館蔵

このナンバーの号のトップ

前のページヘ次のページヘ