アマリリス Amaryllis

2009年度 冬 No.96

美術館問わず語り 美術館と学校との連携

「白隠——禅画の世界」の画像 「学校、図書館、研究所、公民館等の教育、学術又は文化に関する諸施設と協力し、その活動を援助すること」と博物館法 第1章 総則 第3条 博物館の事業にはこのように記されている。
また同様に、先頃改訂された中学校学習指導要領美術編 第4章 指導計画の作成と内容の取扱いには「各学年の『B鑑賞』の題材については、日本及び諸外国の児童生徒の作品、アジアの文化遺産についても取り上げるとともに、美術館・博物館等の施設や文化財などを積極的に活用するようにすること」と記されている。
美術館と学校との連携は、これらに基づき実施されているのであるが、実際にこれを行おうとすると実は幾つものハードルを越える必要がある。「学力低下」が叫ばれるようになり、学習内容が増えるにつれ、授業時数も増加した。40日間の夏休みは昔の話で、現在は30日。それでも授業日数は不足している。美術館へ行くとなれば、さらに交通費の確保、そして安全の確保などがクリアできて初めて可能となる。それだけ学校が美術館へ足を運ぶというのは難しいことなのである。
ところでそのような中、授業時数や、交通費の問題も何とかクリアし、毎年多くの学校が粘土教室・絵の具教室を中心に来館してくれている。しかし、本来連携を強めていかなければならないのは、こうした「表現」の分野だけではなく、「鑑賞」であることを考えると、まだ十分には深まっているとは言えない。
今後、今以上に連携を深めていくために、鑑賞を中心としたプログラムの開発、受入体制の充実、さらに待ちの姿勢ではなく、学校に対し、積極的に情報を発信するとともに、学校に足を運び、授業を行うなどの取組にも力を注いでいくことが必要不可欠である。
(当館学芸課主任 岡崎隆司)

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