コレクション新収蔵品

2007年 静岡県立美術館 収蔵作品

日本画

武内鶴之助  1881-1948(明治14-昭和23)

英国風景の画像
《英国風景》
1909-12(明治42-大正2)年頃
45.8×60.0cm
紙、パステル
武内鶴之助は1909年に渡英し、翌年、ロイヤル・アカデミーへの入選を果たした。本作の写生地は不明だが、武内らしい安定した構図による田園風景である。とりわけ空の表現には雲の描写の研究が活かされており、夕焼け(もしくは朝焼け)を描写するオレンジ系の発色も魅力的である。
紀州瀞峡の画像
《紀州瀞峡》
制作年不詳
45.4×61.0cm
紙、パステル
武内鶴之助は日本におけるパステル画の重鎮として知られる画家。矢崎千代二と並び称される。1909年から1913年まで英国に遊学、帰国後は光風会や国民美術協会展などで活躍した。本作は、谷川と岩肌の描写に意を尽くした作品で、水面の描写にも優れている。パステル画でありながら、吉田博ら優れた水彩画家の仕事を彷彿とさせる。

彫刻

福岡道雄 1936- (昭和11-)

彫刻といえば、人体像が普通であるが、「風景彫刻」というものも例外的に存在する。福岡道雄はその代表的な作家である。黒一色にきらめく水面と釣り人(作者の自刻像)は寡黙で求道的な印象を与えるが、それに反して素材は安っぽい。主題と素材とによって「彫刻とは何か」を自問する自省的な表現が、本作を、風景模型やジオラマを超えたものとしている。

「湯原湖で(2)」
1978(昭和53)年
48×110×90cm
黒色強化ポリエステル、木

金沢健一 1956- (昭和31-)

金沢健一は、幾何学的な構成による鉄の彫刻を作り続けている作家である。《音のかけら》シリーズは、鉄板を様々な形に溶断し、ゴムの足をつけて並べた単純な仕組みであるが、その単純さゆえに、多様な鑑賞体験ができる。大人から子どもまで、あるいは目の不自由な人も、楽しみつつ、同時に形と音、鉄と人の関わりなどの思索へいざなわれる。鑑賞者が積極的に働きかけることによって作品が成立する、参加体験型・現代美術の秀作である。《音のかけら1》は、このシリーズの原点となった作品である。

「音のかけら1」
1987(昭和62)年
2.5×220×220cm
鉄、ゴム

西洋版画

ピエール=オーギュスト・ルノワール 1841-1919

印象派の代表的な画家、ルノワールによるリトグラフ。当時のフランスを代表する画家と彫刻家の2人は親交があり、本作は、1914年頃カーニュにあるルノワールの別荘を訪れたロダンをモデルにして制作された。単純な筆使いで晩年のロダンの相貌を捉えたこの作品は、2人の芸術家の交流を物語る上で興味深い。ご寄贈いただいた作品。

オーギュスト・ロダンの画像

《オーギュスト・ロダンの肖像》
1914年頃
64.3×48.5cm
リトグラフ、紙

日本画

福王寺法林 1920- (大正9- )

月光に照らし出されるヒマラヤの雄大な情景。ヘリコプターで、上空から見下ろしながら描きためたスケッチをもとにしたという。冬の澄明な空気まで感じられるようだ。画家の代表的連作・ヒマラヤシリーズのうちの一点で、スケールの大きさや色彩の鮮やかさ、重厚な質感などに、持ち味がよく表れている。

《ヒマラヤの月》
1986(昭和61)年
116.4×90.8cm
紙本着色

高山辰雄 1923- (大正12- )

抑制された色彩だからこそ、その深みや豊かさを強く訴えかけてくる。沈静した趣に、思わず引き込まれる一点。画面を横に分割する構成は、初期から一貫して高山辰雄の風景画に登場する典型のひとつ。近現代日本画史の重要な一角を占める画家であり、その良質の特徴が観察できる佳品といえる。

《水の頃》
1977-78(昭和52-53)年頃
46.2×65.1cm
紙本着色

堂本元次 1923- (大正12- )

《漓江》
1980(昭和55)年
66.8×102.0cm
紙本着色
中国シリーズの最初期作で、山紫水明の地として名高い桂林を流れる漓江に取材する。紫の微妙な諧調を駆使し、静謐さの中に奥行きある風景を生み出した。堂本元次は比較的作風の変遷の激しい画家だが、中国を描いた一連の作品は画業のひとつの核をなすものであり、その早期の作例として重要である。
《春 あさぼらけ》
1985(昭和60)年頃
80.6×100.1cm
紙本着色
《秋 照り映える》
1985(昭和60)年頃
100.4×80.7cm
紙本着色
独特の透明感ある色彩とリズミカルな筆致で、画家が心ひかれた中国の風土を描き出す。春、ほのぼのと明けていく朝の清澄な気配。秋、紅葉に彩られるあでやかな情景。いずれも水面への移り込みが効果的である。草々会(高山辰雄、山本丘人、吉田善彦らが中心になって発足した遊星会が前身)展の出品作。
 

下保昭 1927- (昭和2- )

独特の透明感ある色彩とリズミカルな筆致で、画家が心ひかれた中国の風土を描き出す。春、ほのぼのと明けていく朝の清澄な気配。秋、紅葉に彩られるあでやかな情景。いずれも水面への移り込みが効果的である。草々会(高山辰雄、山本丘人、吉田善彦らが中心になって発足した遊星会が前身)展の出品作。

《湖山暁雲》
1980-85(昭和55-60)年頃
74.4×101.8cm
紙本着色

福井爽人 1937- (昭和12- )

福井の絵にはたびたび印象的な大樹が描かれる。大地に根を張りめぐらせる生命力と、葉を茂らせて人々を憩わせる慈愛の表情が、小さな人物像とあわさって作品に深みを与えている。澄明な色彩と繊細な筆致による心象的風景画に福井の本領があり、本作にもその特質を見ることができる。

《水を運ぶ》
1987(昭和62)年
100.2×90.8cm
紙本着色

竹内浩一 1941- (昭和16- )

《塵》
1988(昭和63)年
116.6×80.6cm
紙本着色
《洲》
1988(昭和63)年頃
73.1×100.2cm
紙本着色
極端なまでに淡い色調でまとめあげ、静謐な気配をたたえた品格ある作品。繊細(せんさい)な筆触をリズミカルに積み重ねて描写した植物と、その陰にかくれるような動物を組み合わせた画家の得意とする構成である。師・山口華楊ゆずりの精密な描写がその骨格を支えている。

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