ヘッダー
池 玉瀾
IKE Gyokuran

1727-1784(享保12-天明4)

江戸中期の女流画家。旧姓は徳山、名は町、号は玉欄、松風、遊可など。京都に生まれる。祖母は歌集『梶の葉』で知られる歌人梶、母も同じく歌人の百合。代々、才色兼美の家系で、祖母以来、祇園社門前の茶店を営んだと伝えられる。池大雅の妻となり、真葛ケ原に居をかまえた。始め柳沢淇園、のち大雅に南画を学び、当時一流の女流画家として知られた。大雅の画風をよく受け継いでおり、明澄な色彩美と流麗な運筆がしめされるものの、大雅の豪放さに対して、穏和・繊細な傾向をしめすとされる。代表作として、当館所蔵の≪渓亭吟詩図≫のほか、≪便面図巻≫(東京国立博物館)などがある。


渓亭吟詩図

渓亭吟詩図

18世紀(江戸中期)
紙本墨画着色 掛幅装 58.0×125.0cm
平成2年度購入

雄大な山水の景のなか、四阿(あずまや)につどい詩を吟じる文人たち。大雅から学んだ透明感のあるみずみずしい色彩とリズム感ゆたかな流麗な描線によって、山塊や種々の樹木が生き生きと描かれ、健康的で明るい絵画空間が生み出されている。
画の中心となる四阿の場面には、衣をあざやかな朱色であらわした人物が配されている。これが、画中人物を際立たせる効果を生むとともに、アクセントとなって、緑を基調とした画面に変化をあたえている。また、画面左方、喬松の樹葉の下に、通りぬける爽やかな風を暗示するかのように、玉瀾の愛用した朱文楕円印「松風」が捺されている。こうした機知にとんだ遊印のあつかいにも注意したい。
玉瀾画のなかでは最大級の大きさをもつ作品であり、整然とした画面構成、自律した描線の運動、明朗な彩色によって大画面を統制している点、筆者の力量と筆技の確かさをしめす優品といえる。なお、本作品の箱書きは、美濃の代表的な南画家として知られる高橋杏村(きょうそん)(1804‐68)によって安政元年(1854)6月になされている。(Yy)


作品収集の方針と特色

主な収蔵品 作家名リスト 新収蔵品
TOP MENU

ロゴマーク Copyright (c) 1997-1999 Shizuoka Prefectural Museum of Art
禁無断転載・複写