1730-1790(享保15-寛政2)
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前景から遠景まで奇岩を連ね、高さを強調した画面構成や、細かなタッチを積み上げて岩の量感を表わす手法は、室町時代の山水画と共通するもの。右下「古図をもって法眼栄川これを画く」の款記からみても、室町復古の意図をもって描かれたものと目される。驢馬にまたがって散策する文人、東屋から滝を眺めやる文人など、自然と人間との交歓がしめされ、金泥の霞がそれを祝福している。筆者狩野栄川は幕府奥絵師=木挽町狩野の第六代で、明治時代の岡倉天心は「栄川の巧緻」と彼の技術を称賛した。 |