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鄭 相和
CHUNG Sang-Hwa

1932-

韓国に生まれる。1956年国立ソウル大学校美術大学絵画科卒業。1963年ソウルの中央公報館で初個展。1967年渡仏し、ジャン・ギャミオン画廊(パリ)で個展を開催。1969(昭和44)年来日して神戸に住み、信濃橋画廊(大阪)、元町画廊(神戸)、村松画廊(東京)等で個展活動を展開、朝日アートナウ展(1975、兵庫県立近代美術館)等の招待出品も重ねた。70年代より一貫して、塗り重ねた色層をナイフでマス目状に掻き削り、こうした制作行為の集積であるオール・オーヴァー絵画を追求しつづけた。1977年再渡仏し、パリで制作に専念。その後も1978年韓国20年動向展(ソウル、国立現代美術館)、1981年韓国現代作家展(ブルックリン美術館)、1983年韓国現代美術展(東京都美術館)、1987年シカゴ国際絵画展等に出品。その間、現代画廊(ソウル、1983・86・89)、ギャラリー上田(東京、1983・86・91)、元町画廊(神戸、1988・92)等で個展を行なった。パリのモンマルトルに在住。


無題 73-1-14

無題 73-1-14

1973(昭和48)年
油彩,キャンヴァス 162.2×130.4cm
平成3年度購入

作者は下塗りを施した画布に、油彩によって幾層にも色彩を塗り重ね、次いでナイフでその色層をマス目にそって掻き削り、こうした行為の集積によって自らの心象にかなう色と形の対位法を求めていく。或るパッションに導かれた彼の指先は、時に画布そのものを削りこむほど激しく動くが、むき出された顔科のパターンは規則性と不規則性を交錯させながら相互に関連し合い、オール・オーヴァーの効果として、特有な浮力を孕んだ穏和で安定した表情を浮かべ始める。それは、削る行為がむき出した作者の思念の姿なのであろうが、その際本作に見られるように、削り出された白(それは李朝白磁への連想さえ誘う)が図の全体の基調をポジティヴに整えている。色層を否定しては削りこむというネガティヴな制作行為によって、思念の安定をもたらすところに、作者の表現行為の今日性が窺われよう。(S)


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