1596-1656
レイデンに生まれたホイエンは、10歳頃から数人の画家について絵画を学んだらしいが、なかでもハールレムで1年間一緒だったエサイアス・ファン・デ・フェルデからは、もっとも大きな影響を受けている。1618年レイデンに戻り、20年代には、エサイアスと同じく、円形や横長の画面に何人もの小さな人物を配した風俗味の強い風景画を多く描く。また20年代後半には、多彩な固有色が抑えられ、褐色、淡黄色・緑を中心とした単色に近いパレットへと移行していった。ハーグに移った1630年代には、のびやかな筆使いと黄色と灰緑色の色調によって、運河岸の集落や川沿いの町のシルエットが、広大な空の下に描き出されている。円熟期ともいうべき1640年代には、都市景観河川風景、海景、スケートやそり遊びの見られる冬景色が多く制作され、陰に浸された深い色調、暖味のある褐色、薄く溶かれた絵具の素早い扱い、陸地と空・水面の強い明暗対比などは、後期のホイエン作品によく見て取れる技法上の特徴となった。彼は青年時代にフランスに行き、その後もオランダ各地や低地ライン地方を足繁く回っていて、1200点を越す絵画のほか、黒チョークによる多くの速写的な素描をのこしている。 |
レーネン、ライン河越しの眺め 1648年 |
ユトレヒト州にあるレーネンの町を、ライン河越しに西側から眺めたホイエンの1648年の作品。中央に聳えているシルエットは、聖クネラ教会の尖塔で、その左手にはボヘミアの冬王、フレデリック五世(1596-1632)の宮殿と風車をのせた胸壁が見られる。左方の丘の斜面には、もう一つ別の風車が立っている。前景に浮かぶ渡し舟には、馬車の窓から顔を出している貴族らしき乗客、釣人、従者、馬などが乗り込んでいる。右手の岸には牛と漁師の姿が見られる。梯子に昇った男は、魚を捕らえるための大きな円形の罠を小舟に運びこもうとしている。上方の空には灰色と白色の雲が大きく広がり、雲間には美しい青空がのぞいている。小さな鳥は白由に飛び回っている。 |