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菅井 汲
SUGAI Kumi

1919-1996(大正8-平成8)

神戸市東灘区御影町に生まれる。1928(昭和3)年両親が離婚、親戚に預けられ、油絵を習い始める。1933(昭和8)年大阪美術学校に入学する。1937(昭和12)−1945(昭和20)年、阪急電鉄宣伝課に勤務。1947(昭和22)年、日本画家・中村貞以に学ぶ。1948(昭和23)年、吉原治良に絵を見てもらう。この頃は、エルンスト、ミロ、クレーに傾倒していた。1949年渡仏、グランド・ショミエールで学ぶ。1953(昭和28)フォワイエ・デ・ザルティストで今井俊満らと4人展を開催、翌年クラヴェン画廊と契約する。50年代は単純化された動物のテーマから、書を思わせるかすれや、黒く太い線を用いた作品へと移行してゆく。1958(昭和33)年イタリア旅行。1962(昭和37)年、作品を通じて社会と関係を持つことを望み始め、《黒塊 (Masse Noire)》《紫 (Violet)》等を端緒に、明快な基本フォルムの構成へと画風が変化する。1967(昭和42)年ポルシェを購入、スピード体験をふかめるが、同年自動車事故を起こし、重傷を負う。それ以降精密な縮小プランを作成し、助手の協力を得てシルクスクリーンなどを制作している。版画の持つ複数性にも強くひかれ、マルチプル作品なども制作、現在に至る。


Masse Noire

1964(昭和39)年
油彩、キャンヴァス 195.0×130.0cm
平成1年度購入

塗りにかすれを交えたカリグラフィー様の作風から、明快なフォルムと色彩へと移行してゆく1960年代の代表作品のひとつである。1965年のサンパウロ・ビエンナーレに出品され、外国作家最優秀賞を受けた。
ブルーの地に黒い円が移動してゆく4段階を1つのマッス(量塊)としてとらえ、マットな黒の色面で表わしている。そのフォルムの上下に見られる黒の曲線は、計算して地塗りを残した上で、かすれた効果を出している。これは円形の回転のスピード感であろうか、以前の作風の残滓であろうか。晴天を思わせるブルーは、大気に満ちた青空のように黒い塊の輪郭をくっきりときわだたせ、その重量を支えている。このくびれた楕円のフォルムは、紫、青、赤といった異なる色彩でのヴァリエーションもつくられた。またこのフォルムが2つに割れて、中央に鮮明な色彩や新しいパターンが溢れかえり、スピードと爽快さを合わせ持つ「オートルート」のシリーズへと発展する。スタイルの過渡期にあって、大きなエネルギーを含んだ卵の役割を持っていたフォルムともいえるだろう。(Ym)                                   


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