1927(昭和2)-2001(平成13)
広島県に生まれる。1950(昭和25)年京都大学美学科を卒業(カントなどを研究)した後、定時制高校教諭を務めながら、大阪市立美術研究所で彫刻を学ぶ。1953(昭和28)年以降、自由美術展、行動美術展、集団現代彫刻展などに出品。1972(昭和47)年ブルーメール賞を受賞。神戸市須磨の現代彫刻展では、1974(昭和49)年京都国立近代美術館賞、1976(昭和51)年神奈川県立近代美術館賞、1978(昭和53)年大賞を得る。また山口県宇部の現代日本彫刻展でも、1975(昭和50)年神奈川近美賞、1979(昭和54)年北九州市立美術館賞を受賞した。大阪府能勢の採石場近くで制作し、黒御影石に条痕を刻み、ベンガラを摺り込む仕事によって、人間の精神と自然の生命力へのオマージュを追求した。 |
四角柱と丸い石 1985-86(昭和60-61)年 |
作者が制作する大阪府能勢の黒石にノミで条痕を刻み、ロウを混ぜたベンガラを摺りこんだ作品。幾何学的形態として刻まれた寡黙な石が、何やら懐かしげな表情を漂わすのは、ベンガラの条痕とともに、作品に込められた寓意による所が多い。作者によれば、角ばり外に延びるやや傾いた四角柱には、重力に抗して直立しようとする人間の意思が、卵形に膨らむ丸石には、「無限に生命を生み出す大自然の力」が象徴されており、それぞれは言わば、父性原理と母性原理の要約のような趣をもつ。「この石にもたれたりまたがったりしてくれる子供たちの平和な姿が、いつもそこにあって欲しい」というのが作者の願いで、本作は柔らかで懐かしげなマチエールを通奏低音として、人間の生の基本的な営みに寄せる賛歌を穏やかに奏でている。当館プロムナードの自然環境に配慮して新たに制作された作品。(S) |