まず、淡墨で縦横約1cm間隔の線を引き、画面全体に方眼を作ります。 その上から、絵柄に合わせたごく淡い色を薄く塗って下地を作ります。 次に、方眼一つ一つを先ほどよりやや濃い目の色で正方形に塗り込めます。 その正方形の隅にもっと濃い色を小さく付け加えて、ようやく方眼一つの出来上がりです。 必要なところにはさらに色をつけたり陰影を施したりして全体の調子を整え、完成。実に根気のいる、気の遠くなるような作業です。 伊藤若冲が発明したと考えられる独自の描法です。
静岡県立美術館所蔵品と大変よく似た「鳥獣花木図屏風」(エツコ・ジョウ プライス コレクション/カリフォルニア)、現在額装になっている「白象群獣図」(個人蔵)がありますが、現存が確認されるのはこの3点のみです。昭和8年のある展覧会図録には同様の描法による「釈迦十六羅漢図屏風」の写真が掲載されていますが、残念ながら現在は行方不明になっています。
右隻は「獣尽くし」左隻は「鳥尽くし」で、それぞれ実在の身近なものから、外国産、はたまた空想上の生き物まで、様々な鳥獣が水辺に群れ集う風景です。「尽くし」の趣向や白象・鳳凰が各隻の主役であるところから、吉祥性の強い大変おめでたい屏風と言えます。この時代ならではの、若冲なりの「異国」の風景を表すとの説もあります。