年も改まり、今年度の企画展もあと1つを残すのみとなりました。「朝鮮王朝の絵画と日本」展の開催までいよいよあと1ヶ月!
500年の長きにわって続いた朝鮮王朝の絵画についてその全貌を紹介するとともに、日本の中近世の絵画との関係にも踏み込んだ内容となっているこの展覧会、研究者の間からも大きな注目を集めています。栃木展も好評のうちに閉幕、作品たちはすでに当館収蔵庫に移されて、いまや遅しと出番を待っています。
今回はそんな作品たちの中からいくつかをご紹介いたします。
まずは、この展覧会でとくに必見の《瀟湘八景図冊》(図1、個人蔵)。朝鮮王朝時代の絵画は、歴史上の幾多の混乱の中で失われてしまったものも多く、前期の作品は現存していること自体が貴重です。
その中でも、賛者の生存年等から16世紀半ばの制作と考えられるこの作品は、朝鮮絵画史上きわめて重要な意義をもちます。昨年(2008年)発見された初公開作品です。
図1《瀟湘八景図冊》(個人蔵)
つづいて、伝李公麟《虎図》(図2、正伝寺蔵)。若冲の模写が現存することでも知られ、朝鮮絵画と日本の近世絵画との関わりという意味でまさに象徴的な作品です。のちの「民画」へと展開していく要素を持ち合わせる点も重要な意味を持ちます。
李巌《花下遊狗図》(図3、日本民藝館蔵)は、朝鮮時代中期を代表する花鳥画の名手による作品で、柔らかな筆遣いでふっくらとした仔犬が描かれています。そして、こうした作品は、俵屋宗達《狗子図》(図4、神奈川県立近代美術館蔵)や伊藤若冲《百犬図》(図5、個人蔵)にも影響を与えたのではないかと考えられますが、いかがでしょうか?是非、会場で実際に作品を見比べて確かめてみてください。なお、若冲の《百犬図》は、巡回4会場のうち静岡会場のみ展示されます。お見逃しなく!
日韓両国から貴重な作品の数々をお借りし、初公開作品も多く出品されるなど、質・量ともにかつてない規模で行われる展覧会です。充実した内容の図録も会場でしか手に入らないもの。この機会に是非!
(当館学芸員 福士雄也)
図2 伝李公麟《虎図》(正伝寺蔵)
図3 李巌
《花下遊狗図》
(日本民藝館蔵)
図4 俵屋宗達
《狗子図》
(神奈川県立近代美術館蔵)
図5 伊藤若冲
《百犬図》
(個人蔵)
観覧料 |
一般 900円(700円) 高校生・大学生・70歳以上 400円(300円) 中学生以下 無料 ※()内は前売または20名以上の団体料金。 |
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特別講演会 |
場所:当館講堂 各13:30 〜 15:00 2月21日(土) 「朝鮮王朝の絵画と室町絵画」 橋本慎司氏(栃木県立美術館特別研究員) 3月7日(土) 「朝鮮王朝中期の絵画—明宗の時代を中心に」 板倉聖哲氏(東京大学東洋文化研究所准教授) ※特別展チケットが必要です。先着250 名まで。 |
公開ワークショップ |
「朝鮮時代の絵画とその周辺——時代背景への視点」 共催:東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成 −寧波を焦点とする学際的創生− (平成17 年度〜 21 年度文部科学省特定領域研究) 3月1日(日)(場所:当館講座室 13:30 〜 17:30) (1)「朝鮮時代の政治・文化と絵画」 六反田豊氏(東京大学大学院人文社会系研究科准教授) (2)「風俗画に見る朝鮮時代の経済と社会」 須川英徳氏(横浜国立大学教育人間科学部教授) (3)「朝鮮通信使の遺したもの」 長森美信氏(天理大学国際文化学部専任講師) (4)「絵画に描かれた朝鮮時代の水辺風景」 森平雅彦氏(九州大学大学院人文科学研究院准教授) ※先着40名まで。 |
美術講座 |
場所:当館講座室、13:30 〜 14:30 3月15日(日) 「朝鮮絵画と近世の日本絵画」 福士雄也(静岡県立美術館学芸員) |
李京玉(イ・キョンオク)先生のポジャギ教室 |
朝鮮生まれの風呂敷を、パッチワークのようにして作ります。 2月28日(土)、3月21日(土) 場所:当館講座室 各日13:30 〜 16:30 ※特別展チケットと、別途材料費が必要です。 参加を希望される方は、お電話にてお申し込みください。 各日先着15 名まで。 |
特別映像上映会 |
3月14日(土) 場所:当館講堂 13:30 〜 14:45 「朝鮮通信使 駿府発・21 世紀の使行録」 (監督 山本起也、主演 林隆三) ※先着250 名まで。 |
フロアレクチャー |
当館学芸員が展示作品の解説を行います。 3月8日(日)、22日(日) 場所:展示室 14:00 〜 15:00 ※会期中、展示替を行ないます。 |