ヘッダー1





「田中敦子−未知の美の探求 1954-2000」展
関連イベント報告

 人々に美術館へ足を向けてもらうには、どうしたらよいのか。この問いは、美術館とその周辺に勤務している者にとって永遠の課題です。
 7月28日(土)から9月9日(日)まで当館で開催した「田中敦子」展では、広く一般の方に、一見難解な現代美術に親しんでもらうための公開・参加型、実技・体験型のプログラムを実施しました。1. 本展から導き出された4つのテーマについて、講師と参加者とが積極的に議論・交流する場を目指した「連続アートフォーラム」、2. 具体美術協会時代の失われた作品を再制作、その模様を公開した「再制作作品の展示および公開インスタレーション」、3. 前号の『アママリリス』で報告した、子どもワークショップ「ビビッと感じて、じっくり描こう」、4. 本展のために結成された有志のガイドさんたちが展覧会を案内する「ギャラリー・ツアー」、以上の4本です。

<連続アートフォーラム>
 田中敦子氏の世界と現代美術をめぐる問題とをリンクさせ、4つのテーマを設定、各回お一人の講師をお呼びし、講師と参加者との積極的な対話を図りました。初回は、中津川浩章氏(美術家)の「日本の現代美術 東と西」。田中敦子氏が関西を拠点に活動されてきた作家であることに着目し、日本の現代美術における地域性の有無や今の美術の動向などについて、‘コミュニケーション’‘関係性’をキーワードに、お話しいただきました。2回目は田中敦子氏ご本人にご登場いただき、自作について語っていただきました。3回目は田中氏と具体美術協会が子どもの美術教育に熱心だったことから、美術館における美術教育に注目。ユニークなワークショップ活動を展開している、芦屋市立美術博物館の倉科勇三学芸員に、世の中に誤解(?)されているワークショップの実体についてお話しいただいた「大人の美術のはなし。ワークショップのココロみ」。最後は田中氏の作品世界では色彩が強烈なモティーフのひとつである点から、グラフィック・デザイナーの奥村靫正氏に、デザインにおける色彩の意味、現代美術と音楽等の他分野とのコラボレーションについて語っていただきました。
 これらのフォーラムで心がけたことは、日ごろ現代美術に親しんでいない人にもわかりやすい内容にし、参加者が置き去りにならないこと。この趣旨が伝わったのか、全フォーラムに参加いただいたかなりのご年配の方がいたことは、嬉しい驚きでした。

<ギャラリー・ツアー>
 当館では通常、ボランティアさんによるギャラリー・トークを、収蔵品展および企画展で開催し、好評を得ています。この輪を広げるため、本展では館のボランティアさんに加えて、一般の方からも展覧会を案内していただくガイドさんを募集しました。館内、ホームページ、県内図書館や文化施設、新聞等で募集を呼びかけたところ、計27人のガイドさんが決定。2〜3人のグループを組み、展覧会会期中8回のギャラリー・ツアーを行いました。実際のツアーを行うまでに、学芸員によるレクチャーに参加し、自主勉強会を開き、予行演習を体験。徐々に不安も増していったようですが、やる気は満々。展覧会終了後に開いた反省会では、一度だけのツアーでは物足りないという意見とともに、田中氏の作品世界にのめり込み、現代美術への興味が広がったという声が多く聞かれました。各ツアー終了後に行った観覧者対象のアンケートでも、ツアーに参加して良かったという意見が大半を占めました。
 今回の関連イベントで目指したことは、展覧会の内容を伝えるツールになるとともに、その展覧会を超えて美術や美術館自体の魅力を広めること。ただし、こうした普及活動には将来を見据えた視線と息の永い姿勢が必要であることはいうまでもありません。そして、それを記録に残すことによって、終了後もその普及効果を広めてゆく必要性を痛感しました。


(当館学芸員 南 美幸)

<< back | Next>>


来館者の声 ボランティア活動 友の会について 関連リンク
カタログ通信販売 前売り券のご案内 美術館ニュース「アマリリス」より 年報
TOP MENU

ロゴマーク Copyright (c) 2001 Shizuoka Prefectural Museum of Art
禁無断転載・複写