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●本の窓

『宮芳平自伝 −森鴎外に愛された画学生M君の生涯−
自家版(未刊行)

 作家として生きることは、今も昔も大変なことです。画家、宮芳平は、森鴎外の寵愛を受け、短編小説「天寵」の主人公のモデルにもなりましたが、学生結婚がたたって美校を退学し(大正時代のことです)、その後は、一地方の美術教師として生涯を閉じました。しかし、一途に描きつづけ、中村彝や曽宮一念らの友人と、女学校の教え子たちに愛されました。この自伝(原題「琅自伝」)は、そうした親しい人たちへ向けて発行された個人雑誌「AYUMI」に連載されていたものです。昔の先生がよくしたように、わら半紙にガリ版で刷られていました。純粋であるがゆえに悲しく、しかし温かい。そうした作家の生き様は、読者の心に染み入ります。刊行が望まれます。
(学芸員 堀切正人)


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