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美術館問はず語り 子どもと一緒に美術館


どの本で読んだのか忘れてしまったが、「子ども5歳は親5歳」という言葉がある。子どもが5歳なら、親も親として5歳になった訳で、我が子と一緒に成長しているんだよ、という意味だが、これは子育てに悩む親にとって至言であろう。実際、思ったようにならないのは子育ての常で、子どもに鍛えられているという意識は、親にとってある種苦味を伴った実感だ。

しかし、ここで肩の力を抜いてみてはどうだろう。別の角度から見ると、我が子と一緒に子ども時代を追体験できるのも親の特権である。例えば、30代の大人が一人で「ドラ○もん」を見に行くのは、かなりの覚悟を要する(?)が、子どもと一緒なら、何ら恥ずかしくない。映画館ではお父さんやお母さんたちも子どもと一緒になって笑い、目を輝かせている。親子が共通の体験を通して、コミュニケーションを深めることは、家族社会ですら希薄になりがちな今の時代、大切なことだと思うのだ。

当館も、親子で参加できる普及事業を積極的に開催してきた美術館である。勿論、どの事業も子どもたちに美術の喜びを伝え、感性を育むことを目的としているのだが、一方で親子が共に楽しみ、喜びを共有する場としても、けっこう貴重な存在ではないだろうか。左の写真をご覧いただきたい。「みんなの絵の具開放日」の1コマである。父親と子どもは並んで腰を下ろし、手のスタンプ遊びを楽しんでいる。温かい雰囲気が伝わってくる1枚であるが、服が汚れるのも気にせず、絵の具だらけの床に座るのは、大人にとってけっこう勇気がいることだ。二人が遊びの世界を共有しているからこそ出来ることだろう。

また、「こどもたちの粘土開放日」や「土曜工作室」、「色彩アトリエ」など、どの事業で観察していても、親が進んで参加しているグループのほうが、子どもの集中力は最後まで続く様に見える。私の個人的な感想だが、子どもにとっては、親が作った作品から学ぶことより、作っている姿を見て受ける影響のほうがはるかに大きいのではないか。作った作品の上手下手などもあまり関係ないようだ。そのような訳で、大人は童心にもどって心を開放する、くらいの気持ちで参加してもらいたいと思う。当館の子ども向け普及事業では、保護者は付き添い人ではない。実は立派に参加者として考えられているのである。

以上、粘土や絵の具にまみれて楽しそうに活動している親子の姿を見ながら、いつも思っていることを書いてみた。何年かたって普及事業に参加した子どもたちが大人になり、今度は自分達の子どもを連れて来館する時まで、(実はそれほど先の話ではない。)今後も親子を応援するような事業を続けて行きたいものだ。

(当館学芸課主任 福元清志)




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