アマリリス Amaryllis

2011年度 冬 No.104

 新古典主義の巨匠アングルの名画《オダリスク》が、木箱に梱包されている。だが、よく見ると木箱の横板や、その上の刻印までもが、実はキャンヴァスに描かれた絵画なのである。見る人の視覚をだますトリッキーな手法が問うのは、そもそも絵画の鑑賞が様々な視覚の約束事によって成り立っているということである。鈴木慶則は、近年再評価の機運著しい「グループ幻触」の中心メンバーの一人。主導者であった評論家・石子順造が高松次郎を引き合いに出しながら「キャンヴァスの上にキャンヴァスを描けるか」と問うたとき、鈴木は「裏なら描ける」と答えた。それが代表作「非在のタブロー」シリーズ誕生のきっかけとなった。
※この作品は、今冬、府中市美術館で開催される「石子順造的世界」展に出品・展示される予定です。
(当館上席学芸員 堀切正人)

フランソワ・ブーシェ 《石橋のある風景》の画像
鈴木慶則
《非在のタブロー 梱包されたオダリスク》
1968(昭和43)年
キャンヴァス、油彩ほか
125.3×189.5×21.5cm

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