研究ノート
ルドヴィーコ・カラッチからドメニキーノへ
《エルミニアと羊飼い》をめぐる一考察
小針由紀隆
1980年代の中頃、スペインのラ・グランハで1枚のカンヴァス画[図1]が見つかった。スペイン側の調査の結果、このカンヴァス画は、ボローニャ派の画家、ルドヴィーコ・カラッチ(1555-1619)の《エルミニアと羊飼い》であることが明らかとなった。ルドヴィーゴのこの作品は、「エルミニアと羊飼い」を油彩で描いた最初の作例と言われながら、すでに失われたと信じられていただけに、スペインで新発見されたという事実と、その事実によって浮かび上がる新たな疑問は、本作に対する我々の関心をいっそう掻き立てることになった。 (当館主任学芸員) |
(1) |
Whitfield, Clovis "A Progaramme
for 'Erminia and the Shepherds'
by G.B.Agucchi. " Storia dell'arte 19(1973), pp.217-29. |
(2)
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Ludovico Caracci,
Exh. cat. ,Kimbell Art Museum, edited by
Andrea Emiliani, Electa/Abbeville, 1994, pp.125-29. |
図1 ルドヴィーコ・カラッチ 《エルミニアと羊飼い》 ラ・グランハ、王宮 |
図2 ドメニキーノ 《エルミニアと羊飼い》 ルーヴル美術館 |