ヘッダー1





「田中敦子」展関連イベント報告(1)

夏休み子どもワークショップ
ビビッと感じて、じっくり描こう

 7月31日(火)から8月5日(日)までの6日間、子どもワークショップを開催しました。例年、開催中の企画展に関連したワークショップとなることが殆どですが、今年のテーマは「田中敦子」(会期:7月28日から9月9日)。そこで今回のワークショップでは、田中さんの作品世界を「運動=エネルギーの表現」と捉え、動き/エネルギー(生命力)やその伝導を物理的に体験するオリエンテーションと、それを描くための技術を身につける実技を並行して行ないました。ワークシートを使って展覧会を鑑賞したり、人体の動きや自然の形・色などの観察による視覚的な心理体験を重ねたのは言うまでもありません。そして最後に、円と線のモティーフによって全員による作品制作に挑みました。タイトルの前半にある「ビビッと感じて」は、後半の制作「じっくり描こう」に向けた入念なレッスンとも言えますが、後者が完成目標としてあるのではなく、自己を表現するための動機とツール探し、いわばプロセスを重視した内容を目指しました。

<1日目>まず子どもたちに運動に関する生理的なショックを与え(暗室で豆球の明かりにふれる、マッサージ器の上にのせたお米の動きを観察してクロッキー、自転車を漕いでライトを点灯させる、オムロン・マッサージ器で筋肉の動きを知る)、次に展覧会を鑑賞して、そのスケールの大きさ、基本のモティーフ、動きやエネルギーなどの要素について知ってもらう盛り沢山な初日。

<2日目>大騒ぎだった前日から一転して、静かな制作日。運動や成長の様子を描いたり、あるいは色彩の変化を体験。まずは「ジャックと豆の木」の語りで成長のイメージを膨らませ、それをフォルメン線描やぬらし絵で表現(写真(1))。各自の集中力と想像力が試された一日でもありました。

<3日目>前日の制作を鑑賞した後、2つの新しいワークに挑戦。顔料を入れたシャボン玉液を画面に定着させる実験の後、やはり顔料入りのヨーヨーをビニールシートにぶつけて、にわか嶋本昭三に変身!(某スタッフは哀れヨーヨーの餌食に…。)興奮冷めやらぬ中、田中さん以外の作品をスライド上映し、再度色と形の認識へ導きました。この頃になると、円形に敏感なだけでなく、他の形や線の動き、色に関する関心がとても深くなっています。いちばん笑いを誘ったのが、イヴ・クラインのヌード・パフォーマンスの写真だったのは、子ども故でしょうか。

<4・5日目>実技室と講座室を、それぞれ巻段ボールとビニールシートで養生し、円と線による絵画制作を行ないました。題して「Round o nGround」。勿論、田中さんの「Round on Sand」のパクリです。靴下や軍手を丸めて絵具をしみ込ませ、床に転がして痕跡を残したアクション・ペインティングもありました。

<最終日>講座室で制作したビニールシートを実技室に運び、6日間すべての制作で埋め尽くされた実技室は壮観そのもの(写真(2))。 

ワークショップには、大別すると二つの手法があるように思われます。ひとつは、テーマのみを与え、あとは全く参加者の自由に任せるやり方。もうひとつは、目標を設定し、それに向かってメニューをきっちり詰めるやり方。今回のワークショップは、6日間という短い限られた時間の中で、いかに子どもたちの創造力を引き出し、それを表現させるかという問題意識から、後者の方法を選択しました。少ない経験知の中で、今度どのように前者の方法にトライするかが今後の課題です。


(当館学芸員 南 美幸)

写真(1)
ぬらし絵に取組む子どもたち
写真(2)
作品で埋め尽くされた実技室

<< back | Next>>


来館者の声 ボランティア活動 友の会について 関連リンク
カタログ通信販売 前売り券のご案内 美術館ニュース「アマリリス」より 年報
TOP MENU

ロゴマーク Copyright (c) 2001 Shizuoka Prefectural Museum of Art
禁無断転載・複写