「描かれた東海道」展
−関連普及事業−
講師 前田守一氏(版画家)
県内の東海道二十二宿をバスで巡り、そこでスケッチした絵を元に、技法セミナー、実技講座を通して現代の東海道を木版画にする講座を開催した。
●バスツアー
10月13日(東コース 三島〜江尻14名)
10月14日(西コース 白須賀〜府中12名)
秋祭り、結婚式、七五三などに出くわし、旅の醍醐味を味わった。広重が描いた東海道との違いを肌で感じ、自らの目で捉えた現代の東海道を具に観察できた。
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愛鷹山の向こうに富士山が見えるはずだったが‥ |
●技法セミナー
10月21日 10:30〜15:30(実技室 24名)
まず「描かれた東海道展」展示会場を訪れた。作品の鑑賞をとおして、後日開催される実技講座で制作す木版画の原画作成に必要なアイデアを学んだ後、実技室で講師が制作した版木をお借りして刷りの実習に取り組んだ。
作家の版木を実際に刷ることができる機会はあまりないので、参加者にとって貴重な体験になったと思われる。
●実技講座 -実技室 10:30〜15:30-
10月26・27・28日(一版刷り42名)
11月9・10・11日(多版刷り55名)
実技講座では、版画制作の技法以外にもっと大切なことを学んだ気がする。それは絵を描くことと、版画を作ることの違い。版画の楽しみ方の二つである。
版画は白と黒の割合が4:6が目安とされている。山を例にしてみよう。絵を描く時はさらっと山の輪郭線だけで済ませてしまいがちである。しかし、版画は山にある具体的なものをぎっしり描かなければならないと指導された。隅々まで筆が入ることにより4:6という理想的なバランスに近づいて行くわけである。全体を黒くしていくことが、彫る面を少なくしていくことにもつながることがわかった。
また版画の楽しみ方につては、彫りと刷りを繰り返し、徐々に版が変化していく楽しさ。まるで着せ替えを楽しむようにいろんな刷りを工夫して、同じ版から幾つも違う作品を刷り上げていく楽しさを教えていただいた。彫ること、刷ることでその度に変化していく作品を楽しんでいくことが、木版画の楽しみではないかと感じた。
講師の軽妙な語り口による指導と、参加者がそれぞれの作品を見合うことが良い刺激となり、多数の力作が仕上がった。新春早々に、県民ギャラリーをお借りして、これらの作品展を開催する予定である。
(当館主査 柏原幸泰)
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