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きらめく光
-日本とヨーロッパの点表現-

2月18日(火)〜3月30日(日)


 当館では、昨年、開館15周年を記念してポール・シニャック作《サン=トロペ、グリモーの古城》(1899年)を購入しました。この作品は、南フランスの風景を、鮮やかな色点を並べて描いたもので、その点描技法は新印象主義の最大の特徴でした。今回のシニャック作品の購入を機に、当館では「点」にまつわる多様な美術作品を紹介することを考え、この展覧会を企画しました。

 と言っても、印象主義、新印象主義の展覧会は、これまで様々な美術館でなされてきています。当館でも、昨年秋に印象派の展覧会があったばかりです。そこで、発想を転換して、点の表現はなにも印象派だけの専売特許ではないだろう。そもそも点を打つことは、絵を描くことの、もっとも墓本的な動作の一つなのだから、あらゆる絵画に点表現はあるはずだ。ならば、むしろ日本絵画における点表現と、ヨーロッパの点表現との両方を比べて見ることが興味深いのではないかと、考えました。

 そういうわけで、この展覧会は日本の水墨画の点表現から始まります。日本においては、江戸中期から中国の文人画が本格的に移入され、それにともない水墨山水画の点法が多用されるようになりました。池大雅、与謝蕪村らによる南画の流れは、以降、日本の絵画における点の表現の典型として受け継がれていきます。今回、京部国立博物館所蔵のものと、当館所蔵のものとの、二つの池大雅の、しかもどちらも重要文化財の作品が、相まみえます。ぜひご堪能下さい。

 明治になると油彩画が西洋から受容されます。特に印象派や新印象派の点描技法は、日本の多くの画家たちを魅了しました。しかしその「点」の表現は、単なる西洋の模倣ではなく、伝統的な南画の技法との関連の中で探求されたと見ることもできます。大下藤次郎らの水彩画には水墨画との親近性を感じることができるでしょうし、前田寛治のように富岡鉄斎に強い影響を受けた洋画家もいました。青木繁の海の絵が、今回3点並ぶのも見所の一つです。

 現代美術の世界では、草間彌生の名は落とすことができないでしょう。草間のドット(点)の作品とネット(網)の作品は、互いに反転しあう関係にあります。絵画空問の「間」をいかに描くかという問題で、草間の「点」も遠く日本的な「点」表現と響きあっているようです。また、草間に影響を受けた日本の若い画家や、作家と一般市民とが共同制作した作品も、今回、展示されます。

 日本とヨーロッパの点表現。洋の東西を視野に入れて「点」の表現を探ろうとする試みは、おそらく初めての展覧会ではないかと思います。こ期待ください。

(当館学芸員 堀切正人)



ポール・シニャック
《サン=トロペ、グリモーの古城》
1899年 静岡県立美術館蔵



池大雅
《倣王摩語漁楽図》
紙本墨画 京部国立博物館蔵
重要文化財



青木繁
《海》
1905年 個人像


大下藤次郎
《万年橋》
1903年 青梅市立美術館蔵


(参考図版)川田祐子
《BIO−TEXT》
2001年 撮影:長塚秀人

information
会 期:2月18日(火)〜3月30日(日)
入場料:一般・大学生800円(600円)
   小・中・高校生400円(300円)
※( )内は団体20名以上、および前売料金
※収蔵品展、ロダン・ウイング、ブリッジ・ギャラリーもあわせてこ覧いただけます。


●関連イベント  

◇講演会
「東西の点描−大雅・スーラなど−」
講師:関西大学教授・中谷伸生氏

2月23日(日)午後2時〜 講堂にて
申込不要、聴講無料

◇フロアー・レクチャー
講師:当館学芸員
3月8日(土)午後1時〜 会場にて
申込不要、観覧料が必要です。

◇ギャラリートーク

講師:出品作家・高橋洋子氏
3月9日(日)午後2時〜 会場にて
申込不要、観覧料が必要です。

◇鑑賞講座
「ヨーロッパの点描技法−シニャックの場合−」

講師:当館学芸課長・小針由紀隆
3月16日(日)午後2時〜 講座室にて
申込不要、聴講無料

◇春季目由工房
「ミ●・マ●しよう!(ミクロ・マクロ、みましょう!)」

講師:出品作家・川田祐子氏 
    鑑賞教室とワークショップ)
3月21日(金・祝)、22日(土)、23日(日)
各日午前11時〜午後12時30分、午後2時〜3時30分
(22日のみ午前11時〜午後12時30分、3時30分〜5時)
実技室および会場にて
申込み不要、観覧料が必要です。

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