今や、世界中何処へ行っても、日本人のいないところはないと言われるほど、日本人は旅行好きとして知られています。一昨年、当館で「古代エジプト展」を開催した折にも、かの国を訪れたことがある人が意外に多いことに驚かされました、かつては未知や神秘だったものが、実際の見聞やメディアの情報によって、近しい存在に変わりつつあります。
マヤ文明は、中央アメリカのユカタン半島からグァテマラ・ホンデュラスにかけて栄えた高度な都市文明です。マヤ文明が長らく謎につつまれてきたのは、巨大なピラミッドや神殿などの石造りの遺跡に刻まれたマヤ文字が解読不能だったためでした。しかし、1960年代以降その解読作業が進み、現在では約8割が解読された結果、マヤ人がすぐれた暦法や数学の知識、壁画や土器、石彫などの技術をもつ民であり、他方マヤの社会制度や統治システムといった側面も明らかになってきました。
マヤ文明は、紀元前からスペインによって征服される17世紀までに及びますが、この展覧会では、最盛期とされる古典期(紀元250年頃から900年頃)に焦点を当てます。この最盛期には、60以上の都市国家が生まれ、それぞれの王朝史が繰り広げられました。王の肖像は石碑に描かれ、その事績は碑文に刻まれて、歴史を物語る貴重な資料となっています。出品作品は約300点に上りますが、その中心となるのは、日本初公開となるホンデュラスのコパン王朝の発掘品です。世界遺産にも登録されているコパンは、古典期の代表的な都市遺跡であり、その7つ目の王墓を、日本人研究者中村誠一氏が発見しました。さらに、グァテマラのアグアテカ遺跡の発掘品も世界に先駆けて公開されます。ここでも日本人研究者の猪俣健氏が発掘の指揮をとっています。
最新の研究成果によって神秘のべ一ルを脱いだマヤの魅力を、どうぞご堪能ください。 |