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●本の窓
『幕末維新懐古談』
高村光雲著
岩波文庫、1995年(青467−1)

明治・大正の日本を代表する木彫家、高村光雲の語りおこした回想録です。丁稚奉公や修業時代、そして趣向を凝らした作品の数々について淡々と語ってあります。ところが、これが今日の「芸術家」イメージとは随分異なるのですね。仏像を彫る仏師として出発した光雲は、「仏師という職業がこのまま職業として世の中に立って行けるものか」に心を痛め、「写生的に新しく」作風を変えることを思い立ちます。その甲斐あって、「一つ彫刻を頼みたい」という依頼に、「[象牙彫りではなく]木で彫る方の彫刻なら何んでも彫りましょう」と応えてしまう、あっけらかんとした気安さ、そして腕前の自負。生き生きと、小気味良く語られた一巻、お勧めします。
(当館学芸員 新田建史)

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