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●本の窓
『イサム・ノグチ―宿命の越境者〈上・下〉』
ドウス昌代 講談社 2000年

  この本は、ノンフィクション作家として、主に政治的、社会的テーマを長年扱ってきた著者の手による、彫刻家イサム・ノグチ(1904年〜1988年)の伝記です。ロダンに憧れて彫刻家を志した日米の血を引く青年が、世界中が国家主義的価値観にとらわれていたまさにその時代に、苦悩するも、その生い立ちを逆手にとって、独自のスタイルを確立していくプロセスが、著者の熟達した情報収集力と筆力によって、巧みに描き出されています。国、性、そして美術において近代に引かれた境界線をいとも軽やかに越境しながら、多くの人を動かし、自らの理想を実現していくノグチの自由な生き方そのものが、まさに芸術行為なのだと気づかされた1冊です。
(当館学芸員 川谷 承子)
 

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