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<彫刻>と<工芸> ― 近代日本の技と美 ― 好評開催中 10月24日(日)まで
 
 前号の記事では、「香炉や茶碗のようなものを部屋にしつらえて愛でている日本の伝統の中には、工芸品と芸術作品の境目を飛び越えた感性の遊びがある」ということをお話ししました。今回は、展覧会の作品を少しですがご紹介します。
  安藤山《貝尽くし》(10月11日から24日まで展示)は、その名のとおり、暮らしの中で目にするさまざまな貝を、象牙を素材に本物と見間違うほどに精巧な技術で制作しています。あわび、はまぐり、かき、しじみ…といろいろあります。特に彩色は見事なものですが、山は独自の着色法を一切秘密にしていたため、現在では再現することができません。高村光太郎《手》は、ロダンによって始められたトルソ(人間の身体の一部をモチーフにした作品)の影響を受けつつも、東洋的な美的感覚がにじみ出ている作品です。手の表情を象徴的に結晶させたものとも言える仏像の印に、光太郎は深い関心を持ちました。本作の手は「施無畏印」とよばれる印を結んでおり、これは人々の恐れを取り除く意味があるものです。平櫛田中《霊亀随》は二つ展示されています。ブロンズの作品は、彩色木彫の作品をもとに鋳造されたものです。したがって、まったく同じ形の同じ作品ということになりますが、ずいぶんと違った印象を受けるのではないでしょうか。ブロンズは彫刻らしく見えるけれど、彩色木彫はカーネルおじさんの人形みたいだ、などという意見もありそうです。平櫛田中が彩色木彫作品の制作を始めたとき、周囲には反対の声が多かったと伝えられています。しかし、奈良時代の仏像にさえ彩色の痕跡が残っているように、江戸以前の日本では、木像に色をつけることは普通のことだったのです。
  この展覧会では、西洋の感覚とはひと味違う、日本人ならではの立体造形物がたくさん紹介されています。皆様お誘いあわせの上、ぜひご来場ください。


安藤山 《貝尽くし》
象牙、彩色 三井文庫





高村光太郎 《手》
ブロンズ 台東区立朝倉彫塑館

(当館学芸員 村上 敬)
 
平櫛田中 《霊亀随》
木、彩色 日本芸術院
  平櫛田中 《霊亀随》
ブロンズ 広島県立美術館

 
information 
●<彫刻>と<工芸> ―近代日本の技と美 ―
会 期: 8月24日(火)〜10月24日(日)
観覧料: 一般・大学 1,000円(800円)
小・中・高生 500円(400円)
70歳以上無料
※ ( )内は20名以上の団体料金

●シンポジウム「<彫刻>と<工芸>」
10月3日(日)14:00〜 講堂
申込不要 聴講無料
パネリスト(五十音順)
大熊敏之氏(宮内庁三の丸尚蔵館主任研究官)
田中修二氏(大分大学講師)
山下裕二氏(明治学院大学教授)

●須田悦弘氏・講演会
講師:須田悦弘氏(彫刻家)
10月11日(月・祝)14:00〜15:30
実技室 申込不要 聴講無料
 

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