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物語のある絵画
- 日本画と古典文学の出会い -

6月10日(金)〜7月18日(月・祝)

 江戸時代初期の《秋草鶉図》(図1)。余白を広くとった画面に鶉と草花の繊細な描写が調和し、秋の穏やかな風情がただよう高雅な一幅です。しかし、この絵の魅力は、秋の景物が趣深く描き出されることだけではありません。鶉は古くから和歌に詠まれる鳥ですが、その小さな姿には「ひっそりと待つ女」のイメージが重ねられており絵の中の鶉にもこの伝統的な和歌のイメージが投影されているのです。それを踏まえて作品を眺めると、秋のしっとりとした情趣を感じると同時に、物寂しげな和歌の情感をも重ねて読み取り、和歌と絵画とが織り成す重層的な世界を味わうことができるのです。


(図1)土佐光起《秋草鶉図》静岡県立美術館蔵

 本展は、例えばこの作品のように、<文学>と<絵画>が重なり合いながらイメージを広げていく豊かな世界を、桃山時代から近代までの絵画によってご紹介するものです。形と言葉、絵画と文学との連関から生まれ、互いに刺激しあうことで育まれた多彩な作品と、そこから無限に広がる世界。その豊かさを確認し、楽しんでいただければと思います。


(図2)《物語図扇面色紙貼交屏風》個人蔵(右隻)

(図3)松岡映丘《宇治の宮の姫君たち》(右隻)
姫路市立美術館蔵


 特に明治以降の画家では、鏑木清方と松岡映丘に焦点を当てました。新時代にふさわしい<絵画>と<文学>の新たな関係構築を目指した二人の画業は、現代を生きる私たちと絵画の関わり方についても、重要な示唆を与えてくれます。

 出展作品には、古典物語(『源氏物語』『伊勢物語』など)や和歌、謡曲から近代小説(樋口一葉『にごりえ』夏目漱石『草枕』など)までさまざま文学的主題が描かれますが、絵画と文学との深い関わりは実に多様な表現となってあらわれ、絵を前にした私たちがそれらを積極的に読み解き、その豊かな世界に分け入っていくのを待っています。<絵画>と<文学>の幸福な出会いが紡ぎだす多彩な世界を、どうぞお楽しみください。            
(当館学芸員 森 充代)


information 
●観覧料
一般・大人 800円(600円)
小・中・高生 400円(300円)
※( )内は20名以上の団体料金

●特別講演会
王朝文学への招待」
 7月2日(土)14:00〜 
 講師:沢田正子氏(静岡英和学院大学教授)
「松岡映丘について」
 7月9日(土)14:00〜 
 講師:木村重圭氏(甲南女子大学教授)

●学芸員が語るこの一点
「松岡映丘《今昔ものがたり 伊勢図》」
7月16日(土)14時〜
講座室・展示室(観覧料が必要です。)


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