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●本の窓
「狂人の太鼓」


リンド・ウォード著
書刊行会 2002年10月10日 初版第1刷


「絵本」と言えば、絵の入った本であり、絵に読みやすいお話の付いた、子供向けの本を連想するのが大抵でしょう。ところが、この本は違います。全120図、どこにも文章は見当たりません。これは、文字通り「絵本」なのです。ただ、この言葉から連想されるような、ほのぼのとした中身は全く無し。おそらく、奴隷貿易時代のヨーロッパが舞台だと思われますが、木口木版による圧倒的に暗い画面には、ほとんど説明らしい説明は無いのです。奴隷商人の息子が、父親の略奪してきた太鼓と共に孤独な成長を遂げ、人間不信の末に行き着いた先は……そういった中味でしょうか。はっきり言って読み解いていくのは困難なのですが、その強烈などす黒さの奔流に身を任せてしまうと、奈落の底を覗かされるような、ダークな魅力があります。ご一読あれ。

(当館学芸員 新田建史)




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