アマリリス Amaryllis

2011年度 春 No.101

小谷元彦展 幽体の知覚
5月28日(土) 〜 7月10日(日)

 現代アーティストの小谷元彦(1972年−)は、東京藝術大学で彫刻を学んだ後、彫刻、写真、ビデオ等さまざまなメディアを用いて、従来の彫刻の常識を覆す作品を発表してきました。その造形表現と美意識は高い評価を受け、2003 年にヴェネツィア・ビエンナーレ日本館代表の一人として選ばれるなど、国内外でめざましい活躍を見せています。
 小谷は、痛みや恐怖などの身体感覚や精神状態をテーマに観る者の潜在意識を刺激するような作品を制作します。毛髪を編んだドレスや拘束具をつけた動物、異形の少女、屍のような武者の騎馬像など、一つの解釈に帰着しえない多層的なイメージは、美と醜、生と死、聖と俗の境界線上で妖しい魅力を放ち、年齢や性別を問わず観る者の感性を揺さぶります。
 彫刻というメディアに対して鋭敏な意識をもつ小谷は、彫刻特有の量感や物質性を逆手にとるかのように、実体のない存在や形にできない現象、すなわち「幽体」(ファントム)をとらえ、その視覚化を試みてきたといえます。この展覧会では、10年以上にわたって発表されてきた小谷の初期作品から最新作までを一堂に集めるほか、「映像彫刻」とも呼ぶべき体験型の大型映像インスタレーションを紹介します。従来の彫刻の概念を超えて、存在のあり方をあらゆる方向から捉えて形にしようとする小谷の作品を通して、美術表現の新たな魅力と可能性に迫ります。
 本展は、2010年11月〜2011年2月に森美術館で開催された同タイトルの展覧会を、静岡県立美術館の展示空間にあわせて再構成したものです。六本木ヒルズの摩天楼とは対照的な風景の中の美術館で、小谷の作品は異なる魅力を放つことでしょう。また、静岡会場では森美術館での展示の後に制作に取りかかった未発表の新作映像インスタレーションが展示される予定になっています。この作品は、この後の同展巡回先へと会場を移すごとに新たな要素が加わり、最終会場となる、熊本市現代美術館において完成するというプランで、現在、制作が進められています。
(当館上席学芸員 川谷承子)


《Ruffle(Dress04) 2009-10年》
レーザープリント
撮影:木奥恵三
森美術館での展示風景
撮影:木奥恵三
写真提供:森美術館

Information

観覧料 一般 900円(700円)
70歳以上 400円(300円)
大学生以下無料
※()内は前売及び20名以上の団体料金
開館時間 10:00〜17:30(展示室への入室は17:00まで)
その他 主催:静岡県立美術館、静岡朝日テレビ
協力:山本現代
企画協力:森美術館

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