1日目の午前中は、高校生から大人まで幅広い年齢の方が実技室に集まり、静岡大学教授・登坂秀雄氏による「彫刻論」の講義が行われました。日頃どうしてもロダンの作品を注目してしまうことが多いのですが、ブールデルやロッソ、ブランクーシ、マイヨールなどロダンと同じ時代に生きて、お互いに影響を受けあったすばらしい彫刻家たちについて多く語られました。ブリッジ・ギャラリーの彫刻作品を目の前にしながらのフロアレクチャーに参加者一同聞き入り、展示されている作品の関係やつながりについての理解や見方が深まりました。
午後の「手の制作」では、心棒づくりから始まりました。それぞれがイメージした手の形にあわせて、心棒となる角材をのこぎりで切り、堅い番線(針金)を切って、悪戦苦闘しながらペンチで針金を曲げて指先から腕までの形をつくりました。粘土をつけるとき、針金から粘土がずり落ちないようにシュロ縄で巻いて固定して1日目が終わりました。
つくりたい手のポーズもさまざまで、自分のおもいを表現しようとする強い気持ちが、手の心棒づくりの段階から感じられました。
2日目は、心棒に粘土づけ。参加者の皆さんのほとんどが初心者でしたが、登坂先生は、「楽しみながらつくること」「形を写しとるだけではなく、自分の気持ちをこめてつくること」「自分のおもいが入ると作品に緊張感が出てくる」等、制作する上での精神について繰り返し語りながら、粘土の付け方から腕と手の量的なバランスや細部と全体の関係まで、熱心に制作に取り組む参加者にアドバイスをしていきました。最後にお互いのおもいのこもった作品を鑑賞しながら、実技室の中は、満足感や充実感にあふれていました。
ブリッジ・ギャラリーでの講座
手の制作
静岡県出身の切り絵アーティスト福井利佐さんを講師に招き、2日間とも募集定員オーバーにもかかわらず、講師の了解を得て、全員受け入れることができました。
1日目の工作アトリエ「カラフル鯉を泳がせよう!」では、昔の展覧会のチラシなどを使い、切り絵とコラージュで鯉をつくりました。子どもから大人までチラシの絵や柄、文字を生かしたり、組み合わせたりして鯉の模様に仕上げていきました。1つとして同じ柄はなく、花柄、文字柄、動物柄、ロボット柄から人面鯉まで個性あふれる鯉の作品ができると、一人ひとりの作品を壁に飾り、たくさんの鯉たちが元気に泳ぐ群れができました。
2日目は大人向けの実技講座「切り絵」。共同作品として「直線と円の世界」をつくりました。33名応募者が全員出席し、切り絵の基礎から学びました。小さな作品で練習し、次に模造紙ほどの大きな紙にみんなで線と丸を描き、それを分割して切り絵の本番です。白の切り取る部分と黒く残す部分の配分やバランスを考えながら、下絵を白黒で塗り分け、線が全て繋がるように慎重にカッターで切り、全員が黙々と作品づくりをおこないました。
トーナルカラーを裏から貼って所々色づけを行い、できあがった作品をつなげると、ステンドガラスのような美しく見応えのある共同作品が仕上がりました。
今年度からブログをはじめた県立美術館のホームページには、中庭の竹林を背景にガラス面に貼られた鯉の作品や切り絵の共同作品、手の制作や講義など実技室での活動の様子がたくさんの写真とともに載っています。また、美術品のエピソードや展示会情報等、満載です。是非、本誌とあわせてブログもご覧ください。
(当館学芸課主査 伴野潤)
切り絵の世界
完成作の記念撮影
実技室プログラム |
色彩アトリエ「契丹仮面をぺったんタン」 「草原の王朝 契丹展」に出品される仮面や装飾品をテーマに、紙粘土でオリジナル仮面を作ります。 1月28日(土) 10:15~12:30、13:30~15:45 |
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実技講座「日本画 金箔張りに挑戦」 日本画の伝統的な素材である金箔の平押しや砂子蒔きに挑戦します。 講師:鈴木 強氏(日本画家) 1月21日(土)・22日(日) 10:15~16:30 ※2日間ともご参加ください。 |
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工作アトリエ「草木染めにチャレンジ!」 身近な植物を用いた草木染で、オリジナルの布バッグを作ります。 講師:白井仁美氏 2月4日(土) 10:15~12:15、13:30~15:30 |
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実技講座「染色」 絞りやステンシルなどの技法を用いながら、草木染めによるTシャツを作ります。 講師:白井仁美氏 2月5日(日)10:15~16:30 |