アマリリス Amaryllis

2012年度 冬 No.108

美術館問わず語り
活弁と音声ガイドの話


ちなみにロダン館音声ガイドはスティック型
(注/ロダン館は本年3月31日まで休館中です)
 最近は美術館の音声ガイドも進歩しているようです。有名声優や系列局アナの登用はもはや常識。有名歌手によるテーマソング入りのもの、館長や担当学芸員が解説に登場するもの、中には画家自身があの世から舞い戻って語る(という設定の)ものまで。私もいろいろ勉強させてもらってます。
 しかし、ヘッドホンを装着し無言で展示室を行き交う観衆の姿には時に違和感も覚えます。これって、自室に籠もり、DVDで映画鑑賞している姿とあまり変わらないのではないか、と。せっかくの美術館体験がヒキコモリ体験になっているとしたら残念なことです。
 さて、映画と言えば最近は活弁が脚光を浴びており、若い弁士さんによる無声映画上映会などもしばしば開かれています。かつて私は活弁のことを単なる「映画の音声ガイド」のように考えていました。しかし、何度か活弁に接するうち「活弁って上演芸術だよなあ」と考えるようになりました。つまり活弁空間とは、一個の映像芸術としての無声映画フィルムを触媒に、弁士の語り・音楽・観衆の笑いや喝采や涙といったものすべてをひっくるめて成り立つもの。これすなわち、一種の芝居ではないか、と。
 振り返ってみますと美術館の音声ガイドは、生声の解説に代わるものとして登場しています。音声ガイドがトーキーならば生声解説は活弁にあたるかもしれません。むろん、映画も絵画もまずはそれ自体で完結している芸術です。ですが、作品の種類によっては、たんなる解説トークではない「活弁映画のような絵画鑑賞ライブ」なんてことも可能かもしれません。
 展示解説に向かう学芸員に対し、なにやら必要以上にハードルを上げてしまった気もしますが、最近そんなことを考えました。
(当館上席学芸員 村上 敬)

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