コレクション風景の交響楽(シンフォニー)

井伊直弼の目の前で制作。水墨のぼかしに幕末の不安が。

狩野永岳 《富士山登龍図》

1852(嘉永5)
絹本墨画
179.0×87.0cm
文献:33

風と雲を巻き上げ、龍が富士山めがけ急上昇。井伊直弼(8年後、桜田門外の変で暗殺)の御前揮毫作であることが、箱と軸芯の墨書銘から判明する。生々しい墨のぼかしは、幕末の不安の投影か。百年後の横山大観《或る日の太平洋》と酷似している。

狩野永岳(1790〜1867)幕末期、京狩野家第九代。宮廷、九条家、紀伊徳川家、彦根井伊家などで活躍。近年、急速に注目度が高まっている絵師。

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