コレクション風景の交響楽(シンフォニー)

風景の競演

富士山と東海道 富士山という風景 東海道のある風景

日本で最も親しまれ絵画の題材になった山はといえば、わが国の最高峰=富士山であろう。平安時代に、和歌の歌枕を題材にした「名所絵」の分野で登場した富士山の絵画は、『伊勢物語』など物語の絵画化、あるいは富士山信仰の中で生まれた『富士参詣曼荼羅図』など多彩な歴史をもつ。こうした歴史を背景に江戸時代以降も連綿と描き継がれた。時に理想郷をもとめ、時に実際の風景を凝視し、また時に自己の姿をそこに投影しながら、画家は新しい富士山の絵画に挑戦しつづけた。それほどに富士山は、日本の画家にとって特別なモチーフであり、日本風景画史上でも重要な意味をもっている。当館の風景画コレクションから、静岡の風景、富士山の絵画を特集でご覧いただきたい。 また、静岡の風景といえば、五十三次のうち22宿がある東海道も絵画では重要なモチーフである。街道を舞台にした、旅と風景が織りなす豊かな世界をお楽しみいただきたい。

北斎の富嶽三十六景より300年早い最古の富士図連作

式部輝忠 《富士八景図》

室町時代作の可能性。実景に忠実な富士遠望図

狩野派 《伊豆三津長浜より富嶽を望む図》

抒情絵師=狩野探幽のユートピア・イメージ

狩野探幽 《富士山図》

幾何学的な画面構成、新図様の宣言

狩野山雪 《富士三保松原図屏風》

活写!「将軍の権威」と「主君への忠孝」の物語 in 富士山麓

《曽我物語 富士巻狩・仇討図屏風》

富士山カレンダー。幕府の御用絵師特製。

狩野惟信(養川) 《富嶽十二ケ月図巻》

不思議な雰囲気—油彩で描かれた江戸時代の富士

司馬江漢 《駿州薩陀山富士遠望図》

富士と三保松原—伝統的な組み合わせも油彩で

司馬江漢 《駿河湾富士遠望図》

油絵だけでない、江漢晩年の気品ある富士山

司馬江漢 《長沼村富士眺望図》

簡略な筆致で表す立体感

岸駒 《芙蓉峰図》

月光の海面への反映たくみに描写

横山華山 《清見潟富士図》

実景の臨場感、江戸絵画の新たな潮流

原在中 《富士三保松原図》

心にひびく富士山水墨画の傑作

谷文晁 《富士山図屏風》

井伊直弼の目の前で制作。水墨のぼかしに幕末の不安が。

狩野永岳 《富士山登龍図》

北斎に対抗、繊細な広重の富士連作

歌川広重 《不二三十六景》

山頂までも絵になった

歌川貞秀 《大日本富士山絶頂之図》

明快な画面に満ちる溌溂とした初夏の気配

横山大観 《群青富士》

富士をも見下ろす天女の優雅な舞

木村武山 《羽衣》

日本人の心に残る原風景、富士

和田英作 《富士》

風刺画で有名なビゴーは、油彩画も描いていた

ジョルジュ・ビゴー 《富士(沼津江浦)》

イギリス人が見た日本の風景

チャールズ・ワーグマン 《富士遠望図》

失われた風景との対話

五姓田義松 《富士》

寒気をきりりと描く

平木政次 《富士》

金で表された東海道—旅人の風俗も面白い

《三保松原・厳島図屏風》

日本人の感性にひびいた旅愁

歌川広重 《東海道五拾三次(保永堂版)》

銅版による異国調の東海道

安田雷洲 《東海道五十三駅》

あの光琳に画を教えた山本家、今度は影響される。

山本探川 《宇津の山図屏風》

明るくすがすがしい“蔦の細道”

今村紫紅 《宇津の山路》

清方が心を込めた可憐な画帖

鏑木清方 《朝顔日記》

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