春の夕のおぼろげな空気、季節の情趣たっぷりに。
歌川広重 《墨田川春景図》
19世紀中頃(江戸後期)
絹本着色
17.4×30.0cm
隅(墨)田川沿いの春の夕景をきめ細かな筆致で描く。空は微妙な色調の変化により、春特有のおぼろげな空気を巧みに表現している。川には帆舟が二隻ゆったりと下り、満開の桜、北国へ帰る雁の群など季節の情趣を細やかに織り込む。広重肉筆画の傑作。
歌川広重(1797〜1858) 江戸の浮世絵師。葛飾北斎とならぶ浮世絵風景版画の大成者。抒情、旅愁ただよう風景画は一世を風靡した。