着色と水墨の調和、光る伊川の巧さ。
狩野栄信(伊川) 《楼閣山水図屏風》
1802-16(享和2-文化13)
絹本着色、二曲一隻屏風
190.0×194.0cm
秦の始皇帝の阿房宮と思しき豪華な宮殿。その色鮮やかな建築描写もすばらしいが、山水を描く水墨の扱いも見事。堅牢な岩の描写は、初期狩野派への回帰。人物の精細な描写、左下、狩人が射ぬいた白鷺の流血、楼閣前の魚影など、こだわりの細部描写に注目したい。
狩野栄信(伊川)(1775〜1828)
木挽町狩野第八代の幕府御用絵師。江戸後期の狩野派を代表する絵師であり、伊川、伊川院の通称で親しまれる。代表作は静岡浅間神社拝殿の天井画。