コレクション風景の交響楽(シンフォニー)

風景の競演

あこがれの風景 山水という風景 異国という風景

山水という風景

山水画は、中国から朝鮮・日本に伝わり古くから描かれてきたが、東アジア(漢字文化圏)の自然観を表わす魅力的なテーマであり、西洋とは別の展開をしめしてきた。
そもそも山水画は、特定の場所を描いたものではない。目に見えた対象をそのまま再現するのではなく、いったん自らの内に取り込んで胸中に丘壑(山や谷の景)を構築し、その構築された理想的な景(胸中の丘壑)を画面に表出する、というもので、人と自然の一体感が重視された。画家の心のフィルターを通して映された自然の姿。そのような作画理念から生れた山水画は、自然の一部を切り取るのでなく、自然の普遍的な姿、理想的な姿を表わすこととなる。実在の場所の主題にも、この理念は色濃く反映した。
当館には、池大雅・狩野探幽・谷文晁らのすぐれた山水画がある。それぞれに持ち味のちがう魅力的な山水世界をお楽しみいただきたい。

光に輝く柳の葉、清々しく表現。

呉春 《柳陰帰漁図》

元信様式の花鳥山水、さわやかな逸品

初期狩野派 《四季花鳥図屏風》

繊細な描写発見—魚影のぞきこむ子供、宙舞う雀。

狩野探幽 《竹林七賢・香山九老図屏風》

明るい色彩、リズミカルな描線が織りなす雄大な山水

池玉瀾 《渓亭吟詩図》

温雅で端正な山水画—春琴の代表作

浦上春琴 《兢秀争流図》

緊張感ただよう画面—個性あふれる水墨表現

浦上玉堂 《抱琴訪隠図》

中国への憧憬—細密描写の山水

谷文晁 《連山春色図》

着色と水墨の調和、光る伊川の巧さ。

狩野栄信(伊川) 《楼閣山水図屏風》

巨大空間の山水世界。迫力満点の力作。

狩野永祥 《山水図屏風》

異国という風景

まだ見ぬ遠い異国への憧憬、あるいは自らが体験した異国の地に寄せる深い共感——。洋の東西、時代の今昔を問わず、異国に対して抱く様々な想いは、画家たちの創作の契機となり、新たな創造を生み出す原動力となってきた。異国と出会った画家たちは、その交わりの中で何を感じ、何を表現したのか。異国に理想を求めた画家たちは、その風景に何を託したのか。
時代も場所も様々な画家たちの、異国へ注ぐそれぞれの眼差しが生んだ豊かな世界をご覧いただきたい。

力づよい筆力、鉄斎ワールド

富岡鉄斎 《蜀國桟道図》

湿潤な空気に包まれた中国・江南風景

竹内栖鳳 《揚州城外》

画家が心惹かれたテラス

秋野不矩 《ブラーミンの家》

84歳の力強い造形に感服

秋野不矩 《ウダヤギリII》

水彩絵の具って、ここまで描けるのです。

三宅克己 《白壁の家(ベルギー、ブリュージュ)》

油絵の具で、大地の強さを描く

鳥海青児 《張家口》

街角で繰り広げられる静と動のドラマ

佐伯祐三 《ラ・クロッシュ》

日常に注がれるあたたかい視線

清水登之 《セーヌ河畔》

生活者の視点から描かれた普段着のパリ

原勝郎 《バガテル公園、パリ》

夕暮れの水辺に染み入る羊飼いの笛の音

クロード・ロラン 《笛を吹く人物のいる牧歌的風景》

「絵画史上最も過小評価された画家」(K.クラーク)

ガスパール・デュゲ 《サビーニの山羊飼い》

観る人の心情を揺さぶる遭難者の身振りと表情

クロード=ジョゼフ・ヴェルネ 《嵐の海》

一覧へ