コレクション風景の交響楽(シンフォニー)

技法と作者の温かい視線が絶妙にかみ合った秀作

北川民次 《瀬戸十景(表紙)工場の一角 ほか》

1937(昭和12)
紙、リノカット
11.1×11.2cm

1936年メキシコから帰国した民次は、瀬戸にある妻の実家に身を寄せ、やきもので有名なこの街で働く人々の日常風景を連作で描いた。本作は、作者が自ら手摺りした11点組みの版画集。版画の特性を生かした大胆で美しい刻線、明快な構図、白と黒の明暗表現が、働く人々に向ける民次の温かい視線と絶妙にかみ合った秀作である。

北川民次(1894〜1989) 静岡県榛原郡五和村(現:島田市金谷)に生まれる。新しい表現を求めてアメリカへと渡り、放浪の末にたどり着いた1920年代のメキシコで壁画運動に共鳴。児童画教育からもヒントを得て、民衆の現実の生活に根ざした絵画を残した。

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