増殖する網
草間彌生 《無題》
1959(昭和34)
キャンヴァス、油彩
232.5×359.0cm
遠くからは何も描かれていないモノトーンの壁のようにみえるが、近くに寄ると、灰色に地塗りされたキャンヴァスの表面を、白い触知的な網目状の描きこみがみっしりと覆っている。アメリカに渡る以前のデッサンや水彩画の中にも見られる独特の網やドット(水玉模様)が、ニューヨークで抽象表現主義の大画面と出会い、拡張し、増殖した。初期を代表する1点。
草間彌生(1929〜) 長野県松本市生まれ。強烈な個性を放ちながらも、主要な現代美術の動向と密接な連関を見せる草間の足跡は、近年精緻な再検証が行われはじめている。